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「半沢直樹」で大和田暁取締役は、なぜ”憎き敵役”から“恋する乙女”になったのか?

ついにクライマックスへ!

2020/09/20
note

《少女漫画のヒロインにしか見えなくなってきた》
《嫉妬してるのかわいいなぁ~》
《ほっぺぶるぶるブルドッグみたいで可愛い》

 続編「半沢直樹」(TBS系)の放送中、SNSにはこうしたコメントが溢れている。どんな可憐な女優に向けられた言葉なのかと思いきや、対象となっているのは香川照之が演じる東京中央銀行の大和田暁取締役だ。

香川照之 ©getty

 2013年に放送された前作では、“正義の男”半沢直樹(堺雅人)が銀行内にはびこる不正を暴き、その首謀者・大和田暁常務(当時)に土下座させ、見事に勝利した。しかしそのラストシーンでは、関連会社である東京セントラル証券への出向が命じられるという意外な展開が描かれ、半沢の再びの“逆襲”が待たれる状態で、7年もの月日が経過した。

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 そして、満を持して待望の続編が放映されたわけだが、今作はおじさんたちの “顔芸”が大幅増量。さながら歌舞伎のような様相を呈している。そのインパクトのある登場人物たちに“キャラ萌え”している視聴者も多く、《黒崎を演じる愛之助さんの歌舞伎顔芸、声の出し方が最高すぎて笑う》《大和田のシーンだけ巻き戻して何度も観ている》など、新しい楽しみ方を見出しているようだ。

 中でも毎回Twitterのトレンド入りを果たすのが、香川照之演じる「大和田」だ。原作「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」には登場していないこともあり、登場シーンはあまり多くないにもかかわらず、注目度は異常に高い。しかもSNSには意外なほどに女性ファンのつぶやきが多く、その内容の多くが《大和田 可愛い》というものなのだ。こんなことは前作ではありえなかった。大和田はあくまで半沢の宿敵で、憎々しいキャラクターだった。

 それが、なぜいま大和田はここまで「可愛い」の声をほしいままにしているのだろうか。

日曜劇場「半沢直樹」(公式サイトより)

「お、し、ま、い、DEATH!」

 まず、大和田の可愛さの源泉となっているのは、宿敵・半沢に対する特別な執着心だ。

 半沢と大和田の再会シーンが描かれたのは第2話。東京中央銀行の大階段でのすれ違いざま、東京セントラル証券から左遷されそうになっている半沢に、大和田が「何なら、私がなんとかしてあげようか」と持ち掛ける。しかし半沢は「自分の身は自分で守ります」とキッパリ拒否。そこで大和田は顔を半沢にギリギリまで近づけてこう言い放つ。

「ハイっ、残念でした。そんなものは守れませんっ。(中略)君はもうおしまいです。お、し、ま、い、DEATH!」