『MIRROR/DANCE』(浜田省吾)/『友よ人生を語る前に』(THE ALFEE)
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THE ALFEEにしても浜田省吾にしても、歳は私の方が少し上なのだが、売り出しの時期は似たようなものだろう。
同世代感はある。
アルフィー坂崎幸之助との最初の出会いは、深夜のニッポン放送の廊下だった。互いに何者なのかも知らぬ。その程度の売れ方の芸能人だかミュージシャンだか同士だったと思うのだが、以来、廊下ですれ違えば必ず挨拶を交わしていた。20代の話である。
浜田省吾は、愛奴というバンドでドラムを担当した後、ソロに転向した頃だろうか? 世間ではあおい輝彦の『あなただけを』が大ヒットしていた。俺がパーソナリティを務める深夜放送に、リクエストの葉書が毎週毎週よく来ていたのを、今でもよく思い出す。
そして幾星霜。
当時大活躍していたロック、フォーク/ニューミュージック界の強者たちも、何処かへ消えてしまったのか、名前を聞かなくなった、思い出すことさえ……というケースも多いなか、この2組は、チャートなどを見てもわかる通り、いまだ現役感をしっかりとアピールしてみせている。どんな秘訣があるのか? 同世代としては気になるところだ。
浜田省吾は、一昨年以来、昔吹き込んだ楽曲の再レコーディングを続けているそうで、『DANCE』はその企画の一環として“2020年版ニューアレンジ!”の触れ込みのもと、制作された。
曲題名に相応しく、アレンジは四つ打ちである。気になったので、一応1980年代にリリースのオリジナルも聴いてみると、こちらはエイトビート仕様になっていた。
それにしても、70年代後半から浜田省吾は女性には大層人気があった。今もそうした“熱い声援”を変わらず送り続けるファン達は健在なのか、さすがに私もそこはどうなのかわからぬが、きっとそうなのだろう。近影をチェックしてみても、あのサングラス姿には、シャクだが、たしかに変わらぬ説得力がある。
新録音を聴き、思ったのは、意外やこの四つ打ちサウンドの収まりがよい/無理のないものになっていることだった。大体、こういったリアレンジの場合、やっぱ、昔のやつの方がしっくりくるんだよなぁ、というケースが多いのだが、コレはサウンドが結構今時なダンスミュージックになっているクセに、不思議と80年代色の強いロックなメロディとの、ビート/グルーヴ的な齟齬は少ないのだ。そのあたり、果たして浜田省吾の出自がドラマーだったことと関係があるのかどうか、そこは評論家の専門的分析などを待ちたいところではあるが、それはともかくこのミックス。個人的にはキックがもう少し小さめの方が好きだったかな。
しかし、変わらぬといえば、浜田省吾のサングラスどころの騒ぎではないのが、アルフィー三者三様のファッション感覚だろう。音楽性もさることながら、そのそれぞれの美学の揺るぎなさというのも、人の心を離さぬ大きな秘訣的要素であること間違いない。
今週のしんみり「ようやく涼しくなってきた此の頃。同年代の人の訃報が立て続けに舞い込んできてさ、切なくなっちゃったよ。亡くなったザ・タイガースの岸部四郎とザ・ゴールデン・カップスのマモル・マヌーは2人とも71歳で、俺より少し年上。ホント、寂しいなぁ…」と近田春夫氏。「秋口なので、センチメンタルな気持ちになっている私です」
ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。
