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約6000万円不正引き出し……ゆうちょ社長が「もう辞めたいよ」と漏らした日

2020/10/07

「お客様にご迷惑をかけたことを深くお詫びする」

 9月24日の会見でそう謝罪したゆうちょ銀行の池田憲人社長(72)。ドコモ口座などのキャッシュレス決済サービスを通じ、約6000万円の不正引き出しが発覚したのだ。しかも3年前から被害報告があったにもかかわらず、入金停止などの対策を講じていなかったという。池田氏は「少しでも早く公表すべきだった」と頭を下げるしかなかった。

池田社長は「リスク感度が非常に鈍かった」と謝罪 ©共同通信社

 横浜銀行出身の池田氏は03年、経営破綻した足利銀行の頭取に就任。4年半の短期間で経営再建を果たし、その手腕は高く評価された。転機は11年の東日本大震災。東北大卒の池田氏は東日本大震災事業者再生支援機構社長に就任し、復興に力を注いだ。

 そして16年、ゆうちょ銀行社長の椅子に座る。だが、日本郵政社長(当時)の長門正貢氏や、日本郵便社長(同)の横山邦男氏との関係がしっくりいかなかった。「地銀出身の池田氏に対し、元興銀常務の長門氏と、元三井住友常務で西川善文氏の右腕・横山氏は上から目線だった」(日本郵政関係者)という。

 中でも預金限度額の引き上げを巡って、長門氏とは激しく対立。池田氏は「ゆうちょの成長には地域金融機関との信頼関係が不可欠だ」と地銀圧迫にも繋がる引き上げに慎重な構えだったが、昨年4月、長門氏の強い意向で、1300万円から2600万円への引き上げが決まってしまう。池田氏は当時「横浜銀行が懐かしい。もう辞めたいよ」と周囲に弱音を吐いていた。