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「思わぬ不始末…」北朝鮮で韓国人射殺 なぜ金正恩は“異例の謝罪”をしたのか

2020/10/04

 韓国国防省は、9月24日、朝鮮半島西側の黄海で違法操業の取締中に行方不明になった漁船指導船の乗組員が、北朝鮮の軍当局者に射殺されていたと発表した。さらに北朝鮮当局は男性の遺体に火をつけて燃やしたという。文在寅大統領は「いかなる理由でも容認できない」と北朝鮮に責任ある説明と措置を求めた。

 翌日、北朝鮮は韓国に金正恩朝鮮労働党委員長の名前で書簡を送り、こう謝罪した。

「我が方の水域で思わぬ不始末な出来事が発生し、文在寅大統領と南側の同胞に大きな失望感を与えたことを非常に申し訳なく思う」

文在寅大統領 ©AFLO

 北朝鮮で最高指導者が謝罪することは極めて異例のこと。過去には1976年に北朝鮮軍兵士が米軍将校2人を殺害し、金日成主席が「遺憾の意」を示した「ポプラ事件」や、金正日総書記が2002年9月の日朝首脳会談で日本人拉致を認めた例ぐらいしかない。

 事件について、脱北した元北朝鮮高官はこう語る。

「7月に泳いで開城市に戻ってきた脱北者に新型コロナウイルスの感染が疑われ、北朝鮮軍の責任者が更迭。1カ月程前から事前連絡なしに入国しようとする者は射殺しても構わないという指示が出ていた。今回、処罰を恐れた現地指揮官が過激な行動に出た。遺体を焼却したのも防疫のためだろう」

 なぜ今回、異例の謝罪を行ったのか。