2003年3月7日に松永太と緒方純子の逮捕から1年を迎えるにあたり、死亡した広田由紀夫さん(仮名、当時34)の親族は、それより前に一部メディアの取材を受けていた。
監禁致傷の被害を受けた少女は
その際に親族のAさんは、由紀夫さんの娘であり、監禁致傷の被害を受けた少女について、「清美(仮名)はいま、元気にしています。施設を出て完全にひとり暮らし。児童相談所の事務の手助けをしています。電話がたまにある程度ですが、正月は一緒に過ごしました。だいぶ立ち直った様子で、本人はヘアーメイクになりたいと言ってます」と答えている。
ただし、立ち直ったとはいえ、Aさんは清美さんとの会話のなかで、事件についてはほとんど触れていないという。以下、Aさんの発言である。
「だいたい最初から清美は話したがらなかったですね。前はこちらからも聞いたんですよ。児相に面会に行くでしょう。事件について聞いたらすぐに下を向いて、黙り込んでしまってね。辛いんかなあと思って、それからはずっと(事件について)聞いてないです」
また、今後の裁判で証人尋問での出廷が予想される清美さんについて、次のように話している。
「松永、緒方とは顔を合わせることはないということは、本人にも言ってあります。『落ち着いて、ありのままを話しなさい』と。清美は『ドキドキするね』って言ってました」
清美さんは、父親との思い出の品を持っているらしい。
「あの子は写真だけは持っています。お父さんと一緒に写っている写真です」
ただし、由紀夫さんに関して残っている物はそれだけで、ほかにはなにひとつないことから、通常の被害者遺族とは違う状況が生まれているようだ。
「家でよく話すんですが、(由紀夫さんの)遺骨そのものがないでしょう。だからいま、事件で亡くなったとは聞いても、遺骨がそばにないから、実感がないんですよ、まだね……」
そのため、事件発覚から間もなく1年という時期にもかかわらず、由紀夫さんの仏壇などは揃っていない。Aさんはその無念の気持ちを松永への怒りとして向けていた。
「あれですよ、由紀夫がされたごとね、(松永)本人が目の前におったらね、電気で通電さしたい、と。どんなものなのか、自分でも味わってもらいたいですよ……」
こうした発言の端々から、遺族のやりきれない心情が伝わってくる。