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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

2020/10/20

genre : ニュース, 社会

「被告本人の自白のみである場合は、有罪にすることはできない」

「智恵子さん事件の起訴を受けて出したコメントについて、“松永被告はもちろん、緒方被告についても十分な証拠があるのか”と述べましたが、当然、力点がどこにあるかというと、“緒方被告についても”という点です。(略)緒方被告について、なんで私がそんなことを言ったかというと、自白補強法則の問題があります。つまり、刑事訴訟法の三百十何条かでですね、有罪を認定する証拠が被告本人の自白のみである場合は、有罪にすることはできない、と。それに従うと、とくに智恵子さん事件、あるいは和美さん(仮名=緒方の母)事件なんかもそれに近いのではないか、と見ていますが……。まあ、少女(清美さん)は基本的にノータッチですからね。となれば、純子さんの供述しかないということであれば、補強証拠はないのではないか、ということです。証拠がなければ、被告人が罪を認めていても、有罪にすることはできないはず。そのへんについて、我々も、果たして証拠があるのかという点については、重大な関心を払って今後の公判活動に臨みたい、と。そういう趣旨でああいうコメントを出したわけです」

末松事件についての質疑応答

 その後の質疑応答では、先に取り上げた母親と子どもの不審死についての質問も飛び出した。母親の名は末松祥子さん(仮名)という。記者をQ、弁護団をAとして、そのやり取りの一部を抜粋する。

(写真はイメージ) ©️iStock.com

Q「末松事件については、松永被告はなんと言ってますか?」

A「子どもについては、事故死だと。あと、母親は海に落ちて死んだ、と。まあ、事故か自殺だろうと。同居の経緯については、詳しく聞いていません。マンションかどうか、どこにあったのかも聞いていません」

Q「末松事件について、子どもは事故死とありましたが、その状況は?」

A「えーっとね、転倒して、頭か背中か、とにかく体を打ったと……。なんで打ったとかは詳しく聞いていないですから」

Q「松永被告はその現場にいたと?」

A「それはわかりませんよ。いなかったんじゃないですかね。(事故当時)警察官から話は聴かれたようなんですよ。ただ、松永さんはなにも聴かれていない。緒方さんは警察から事情を聴かれて、答えていたみたいですけど、もちろん、当時、偽名を使って。(死亡した)子どもに対して、通電はしていないと思うが」

Q「それは松永被告が調べで聴かれたんですか?」

A「いや、これは松永さんが緒方さんから聞いたんじゃないですか、当時」

Q「この事件に絡んで、現在、取り調べは受けていますか?」

A「事情は聴かれたりはしているようだが、調書とかはありません。智恵子さん事件での逮捕から起訴されるまでの間は、聴かれていないようです」

Q「その期間に、検事は“立件は無理だろう”みたいなことは言いましたか?」

A「そうです」

Q「末松事件について、母親(末松祥子さん)の別府湾水死については?」

A「話は聴かれている」

Q「亡くなった当時は?」

A「当時は……記憶が正確じゃないんで」

 新聞記事では、子どもが死亡した際に、病院は警察に届けずとあったが、この場では緒方は警察に事情を聴かれたとのことだった。こうしたことからわかる通り、逮捕から1年以上を経てもなお、情報は錯そうしていたのである。

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