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連載近田春夫の考えるヒット

Perfume新曲で再発見 作詞家・中田ヤスタカの凄みとは――近田春夫の考えるヒット

2020/10/07

『Time Warp』(Perfume)/『サマーとはキミと私なりっ!!』(虹のコンキスタドール)

絵=安斎 肇

 今でいうところのいわゆる“女子アイドル”が、往年の“女性アイドル”と繋がっているのかと問われれば、それは微妙である。

 何が一番違うかといって、かつては、皆歌手を目指し、結果的にアイドルのポジションに収まった。今や彼女らには、音楽家/歌手であることへの執着やこだわりは、それほどないようにも見受けられる。それが証拠に、グループを辞めたあと、あらためて本格的に歌手を目指し、そして大成功を収めたという例はないとまではいわぬけれど、ほぼそれに近い。

 一方、昨今のアイドルを支えるファン達が、ご贔屓の何を愛でるといって、歌唱力! というのもあまり聞かぬ話だ。

 総じて。俯瞰してみれば、この令和のアイドル産業に於いては、需要供給共々、構成要素として、音楽そのものへ求めるものの比率は――相対的にいって――低下しているのではないか? というのが俺の見立てだが、かかる論点に立ちシーンを検証してみると、なるほどと思える傾向も、散見されぬ訳でもない。すなわち“保守化”である。

Time Warp/Perfume(Universal)作詞・作曲:中田ヤスタカ 今年メジャーデビュー15周年を迎える3人組テクノ・ポップユニット。

 何度かこのページでも触れたかと思うのだが、時代の進むにつれ、AKBしかり、ハロプロしかり、冒険をしなくなった。実験を試みなくなった。業界全体的に、刺激の少ない、いい換えれば耳に優しい無難な作りの曲の占める割合は増してきているのでは? というなかで、2年半ぶりに新曲を発表したPerfumeを、果たしてアイドルと呼んでいいのかは、議論も分かれるところだが、彼女たちにも保守化の波はやって来ているのか? また、このコロナ禍のなか、中田ヤスタカは彼女たちに何を託したのだろう? 『Time Warp』の動画をチェックすると、どこか80年代の“テクノ歌謡”を意識したような、ちょっと懐かしさも感じさせる音だった。なるほど、あの時代にタイムワープさせるのが狙いなのだろうが、サウンドプロダクションにこれといった目新しさのないのも正直な感想ではある。

 ところで、この歌の主人公は“僕”なのである。『だってだってだって』でついに専売特許? の“僕”をやめた秋元康の後を受け継いだなどということもないだろうが、おそらくは本人がモデルと思しき主人公の、少年時代に想像していた未来と、今の現実の景色をオーバーラップさせた、一種、時を駆ける物語になっている。そして結局、あの頃にはもう戻れはしないという、切ない思いだけが残る仕組みである。

 そのあたり、あらためて歌詞を読むと、こうしたパンデミックに見舞われた2020年にはひとしお胸に迫るものがある。この歌詞が“僕”で綴られたのにもきっと理由はあるのだろう。それにしても中田ヤスタカの作詞家としての評価は、もっともっと高くていい。あらためてそう思う。

サマーとはキミと私なりっ!!/虹のコンキスタドール(キングレコード)“自称アイドル界イチ夏曲の多さ”を誇る12人組ユニット。

 虹のコンキスタドール。

 この無理矢理とも思える勢いのつけ方には、笑えた。あ、もとい、敬服した。

今週の朗報「コロナの影響でネガティブなことばかり目につく近頃だけど、逆に社会が変化してよかったこともあるよね」と近田春夫氏。「横浜市のカジノ誘致の問題もそのひとつ。参入を狙ってたアメリカの大手カジノは撤退したし、猛プッシュしてた林市長と菅さんもだんまり。このままいくと白紙になるのかな? まさにケガの功名ってやつだね」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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