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「地獄への入口」だった福島第一原発 尿意に襲われた初出勤の顛末

『ヤクザと原発 福島第一潜入記』#6

2020/10/18

source : 文春文庫

genre : ライフ, 社会, 読書, 医療, ヘルス

note

 30年近くヤクザを取材してきたジャーナリストの鈴木智彦氏は、あるとき原発と暴力団には接点があることを知る。そして2011年3月11日、東日本大震災が発生し、鈴木氏は福島第一原発(1F)に潜入取材することを決めた。迎えた作業初日、Jヴィレッジから1Fへと向かうのだった。『ヤクザと原発 福島第一潜入記』(文春文庫)より、一部を転載する。(全2回の2回目/前編を読む)

◆◆◆

地獄への入口

 出発の時間はすぐに来た。急ぎ全面マスクを付け、手袋を三重、靴下を二重にはく。汗かきの自覚があるので、全面マスクを装着する前、熱中症防止のためさらなる水分を補給しようと判断、車内で飲んだ水では足りないと思い、持参した500ミリリットルのスポーツドリンクを一気のみした。

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 作業員が現場に向かうための出入り口は、私が入ってきたそれの正反対の場所にあった。その周囲にも熱中症予防のための注意書きが貼ってあった。係員にドアを開けてもらい、右側を進む。左には作業を終えた作業員の表面汚染を測定する装置を持って、4人のスクリーニング要員が待機していた。

(著者提供)

 左右はパーテーションで仕切られていて、それぞれの協力会社の全面マスクが何度基準を超えたか、“正”の字によってカウントされた紙が貼ってあった。もっとも多かったのは、死亡事故を起こしたいわき市の不二代建設だった。