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連載近田春夫の考えるヒット

“勤続25年”のV6 新曲は「バリバリのサラリーマン哀歌」だった――近田春夫の考えるヒット

2020/10/14

『It's my life』(V6)/『Winding Road~未来へ~』(FANTASTICS from EXILE TRIBE(rhythm zone))

絵=安斎 肇

 どうしてここまでと思うほど、今の日本人は、失敗をやらかした芸能人を追いつめるのが好きになっちゃったかなぁ。まぁ、昔から“他人の不幸は蜜の味”とは言いますけど、山口達也の件など、事情を全く知らぬ外国人がたまたまニュースでも見たら、殺人か何か取り返しのつかぬことをしでかした凶悪犯が逮捕されたと思うに違いない、恐らく多分(笑)。

 そうしたこの国の好奇心のあり方を私は決して歓迎するものではないが、麻生太郎風に申せばそれも“民度”の為せる業なのかと。俺も“一芸能人”として、日々間違いを犯さぬよう心していかねばね。

 とかなんとか、そんな風潮がアイドル界隈の音源にも、いつかしら影を落とし始めている!? かどうか、そこはよくわかりませんが、V6、FANTASTICS共々、気のせいか、新曲の題にもなんだか少~しだけ、影響してる気はして。『It's my life』に『Winding Road~未来へ~』なんですけども……うーむ。単に俺の思い込みに過ぎない可能性も充分にあるね、ハイ。

It's my life/V6(avex)作詞:宮田‘レフティ’リョウ、作曲:Radical Hardcore Clique。V6は今年、デビュー25周年を迎えた。

 それはともあれ、パッと聴いて、この二曲、どこか似ているなぁ、という感触を持ったものである。

 その理由のひとつは、両者とも着実に歩を進めていくような印象を聴き手に与える、落ち着きと力強さを兼ね備えたテンポ/ビートを、基本に据えていることである。いい換えるならば、どちらもゆったりとしていながらダンスオリエンテッド(指向)な仕様/作りになっている。“踊り映え”もする真面目なjpopといったところだろうか?

 いずれにせよ、ジャニーズとLDHのサウンドプロダクションそれぞれならではの特色は、ますます薄らいでいっているように、改めて思った。

 ならば歌詞もそんな調子で、似通ったコンセプトなのかいなと、軽い調子でチェックを始めたらば、いやビックリ! ♪乗り過ごした見知らぬ駅で/とりあえずビールを流し込んで/そんな日もまあ、良いもんですね/なんて隣の客とはにかんで

 なんとV6の方は、バリバリのサラリーマン哀歌だったのである。

 ここまで生活感の漂う歌は、さすがに予想もしていなかったのだが、映像を観ると、通勤用のスーツ姿やお勤め人の普段着を思わせる衣装も実に様になっていて、彼等がアイドルであることを忘れてしまうほどにリアリティーがある。

 ところが、そんな中年サラリーマンが一瞬にして群舞に転じた途端の、その見事なまでのスキルの高さと一体感だ。私は圧倒されてしまった。この“落差”はたまらない。まさに勤続25年! 一緒に戦い築き上げてこなければなし得ない「阿吽の呼吸」というものの存在を、目の当たりにさせてもらった気がする。

『It's my life』。タイトルに偽りナシだ。

Winding Road~未来へ~/FANTASTICS from EXILE TRIBE(rhythm zone)ツインボーカルにパフォーマー6人の分業体制。

 FANTASTICS。

 絵の完成度は同等だが、メンバーの醸し出す“味”はV6にまだまだ及ばないですね。

今週のハッピー「ヒゲって似合う似合わないがあるよね。ミック・ジャガーが生やしたときはカールのおじさんみたいでイマイチだったっけ」と近田春夫氏。「この前、安齋肇さんに会ったらヒゲモジャになっていて驚いたよ。安齋さんはいつもにやにや微笑んでるけど、ヒゲのお陰か色気が増していて格好よかったなあ。久しぶりに会えて嬉しかったです!」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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