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〈堀江貴文×野村克也〉「人生最大」の「切り捨て」だった――伴侶との別れから学んだこと

『夢中力』より #2

note

 ITから宇宙開発まで幅広い分野で活躍する実業家堀江貴文氏。生涯一捕手を貫き、選手としても監督としても名声を集めた野村克也氏。
 全く異なる分野で活躍する両者ではあるが、二人の間には意外にも共通点が多く、プロ野球界再編騒動の際には極秘裏に会談し、野村克也氏が亡くなった日の一週間後には書籍化に向けた対談が予定されていたなど、確かな関係性を築いていた。ここでは別ジャンルながら、互いに共鳴し合い、第一線で活躍し続けた堀江貴文氏、野村克也氏それぞれの「愛」についての思想を『夢中力』(光文社新書)から引用し、紹介する。

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【堀江】妻子。人生で失った「最大のもの」

 1999年。僕には結婚していた時期があった。いわゆる「できちゃった婚」。

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「あなたの通帳を預かったほうがいいと思うの」

 僕がビジネスで億単位のお金を動かしているのを知らなかったといえ、家計簿もろくにつけたことがないような20代半ばの女性。「管理は無理だよ」と説明したのに。

「生命保険に入ってほしい。学資保険に入ってほしい」

 僕は保険に入らないポリシーを掲げていることをいろいろなところで語ってきたし、残された家族が困らない程度の財産は充分に残してあげられる自信もあった。

 さらに、週末は子育てへの協力を頼まれ、帰宅するのが憂鬱だった。

 なぜなら当時の僕は、ネットバブルの勢いもあって忙しすぎた。1分1秒で中小企業の資産数社分の巨額のお金を動かし、心身ともに疲労困憊していたのだ。

 そう言うと冷たい人間と思われるかもしれないが、事情が特殊すぎた。結局、結婚生活は2年ほど。僕たちはまだ若かったのだ。「人生最大」の「切り捨て」だった。

 子どものおもちゃがなくなった殺風景な一軒家は本当に寂しかった。引き出しの中から息子の一枚の写真が出てきたとき、失ったものの大きさに打ちのめされた。

 父親の役目は成人するまでの充分な教育と豊かな生活。その意味で僕は充分に愛を注いできた。

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独身でいることを選択した

 そんな話をしたあとに不謹慎だと誤解を招きそうだが、男性は結婚後も恋愛を続けたほうがいいと思う。もちろん奥さんに最大限の敬意を払うのが大前提だ。

『人は見た目が9割』という本もある。身だしなみに気をつかえば、思考停止につながる「オヤジ化」は防げる。女性にモテれば当然、奥さんにもモテる。

 僕は妻がいる上で別の恋人をつくる器用な恋愛は面倒なので、独身でいて、自由な恋愛市場にいることを選んだ。