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連載近田春夫の考えるヒット

22/7『風は吹いてるか?』で考える、秋元康氏は何が「嫌」なのか――近田春夫の考えるヒット

2020/10/23

『風は吹いてるか?』(22/7)/『amp』(Da-iCE

絵=安斎 肇

『風は吹いてるか?』は、『22/7 音楽の時間』という人気リズムゲームアプリの主題歌だ。ネット検索をすると、アニメによるバーチャルな女子アイドル集団が歌い踊る動画が、UPされていた。

 タイトルが秋元康っぽいかなと思っていたら、実際秋元康の作詞だった。

風は吹いてるか?/22/7(Sony Music)作詞:秋元康、作曲:細井涼介。秋元康がプロデュースする“デジタル声優アイドルグループ”。

 前にも似たようなのがなかったっけか? あ、そうだ。『風は吹いている』だ! 東日本大震災の年のAKB48の曲だ。

 今年はコロナ元年。そしてまた新政権誕生の年でもある。

“風が吹く”という概念は、秋元康にとっては何か特別な思い入れ/意味のあるものなのかも知れない。

 前作では、心配ない、安心しろ、といったことを“風は吹いている”といって表していたが、今回はタイトルを見れば分かる通り、その逆だ。こんなことで大丈夫なのか? そんなニュアンスである。

 どちらにも“傍観者”といういい回しが、否定的な意味で用いられているのが興味深い。見て見ぬ振りをするな、ということなのだろう。そこに秋元康は強いこだわりを持っているのだと思った。

『風は吹いている』は、いわば震災からの復興への応援メッセージということがハッキリと分かる歌詞内容だった。今回もたしかにメッセージソング色は強いが、では、傍観者であってはならぬという、その対象とは何なのか? そこを読み解く必要のある点が前作とは異なる。解釈を聴き手の想像力に委ねるようなところのある書き方なのだ。

 最初は、コロナ禍の状況にでもまつわるものなのかと思った。しかし例えばこのくだり、

 ♪解決してない過去があるなら/議論をするべきだ

 これはどうやらコロナではなさそうである。では何なのか……? いずれにせよ、この歌詞が男女間の揉め事やらといった下世話な話ではないのはたしかだ。大体、そんなものに風の吹く吹かないもないですもんね(笑)。

 解決してない過去は二つ考えられるだろう。まずは韓国やロシアとの揉め事だ。だが、そこに秋元康が触れることはあるまい。ややこしい話にならないとも限らないからだ。

 おそらくは国内に未だ渦巻く“あの問題”ではないか。それにしてもここまで「ノー」という感情をストレートに剥き出しにしてみせた(と思われる)秋元康は初めてだ。なにせ、

 ♪嘘だ 嘘だ 目を覚ませ!

 とまでいっているのである。

 ♪僕は 僕は 立ち上がる
 ♪嫌だ 嫌だ 反対だ

 ともいっている。なのだけれど、その強いコトバが何に向けられているのかは、結局――斟酌は可能にせよ――歌詞からは分からず仕舞いなのであった。

 一体秋元康は、何を嘘だといっているのか? 何が嫌なのか、何に反対なのか? そして本当に立ち上がるのか?

 気になる歌詞なのである。

amp/Da-iCE(avex)4オクターブを誇るツインボーカルが魅力の5人組ユニット。本作は五感“聴覚”がテーマで、リーダーの工藤大輝が作詞。

 Da-iCE。

 このハイトーン二人の絡みは、本当に“職人芸”だよなぁ。“売り”なのは分かるわ。

今週の風は吹いてるか?「ここ最近、日本学術会議の任命拒否にしても嫌なニュースばかりでウンザリだよ。菅という人の危険性が露呈してきたと思うのは俺だけかしら」と近田春夫氏。「首相たるもの権力を行使する快感に酔うんじゃなくてさ、この国を良くすることにエネルギーを使ってほしいよね。まさに ♪嫌だ 嫌だ 反対だ の気分だなァ」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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