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可燃ごみ内グラスで手が血まみれに…清掃員が体感した「日本人のマナー」のリアル

2020/10/22

source : 文藝春秋 digital

genre : ライフ, ライフスタイル, テレビ・ラジオ

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『日本人はマナーがいいなんて嘘』ごみ収集員が対峙する日本の違反ごみ」という記事を読んだ。取材に費やした時間と労力を想像させる力強い記事だった。ごみ清掃員として働く私は、一つ一つのエピソードに頷きながら、時には“あるある”と口に出しながら共感した。

写真はイメージ ©iStock.com

 特に「違反を知らせるシールを貼る作業も時間ロスの1つ」(神奈川県40代男性)などはコロナ禍において顕著だった。外出自粛を機に家の片付けをしようと考えたご家庭は多く、例年以上のごみが出た。その中には分別することが面倒なのか多くの違反ごみがあり、それら一つ一つにシールを貼っていく。ごみ清掃員を長くやっていると、わざとルール違反をしているのか、ルールを知らないだけなのか、ごみを見るだけでわかる。可燃ごみの中に、使いかけのラー油の瓶やドライヤーが入っていたことがあったが、これは明らかにルール違反だと分かってはいるけれども、分別するのが手間でそのまま捨てたと考えられる。そういうごみに作業の手を止めて違反シールを貼る手間はとても虚しく感じる。

知らずにつかみ何度も血まみれになった

「割れたガラスがごみ袋に入っていて知らずに掴んで大怪我をした人もいました」(京都市40代男性)

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 私はごみ清掃員を8年間やっているが、このような経験を何度もしている。割れた茶碗やグラスが可燃ごみに入っていて、知らずにつかみ何度も血まみれになった。応急処置として効果があるかどうかわからないがファブリーズをよく手にかけたものだった。軍手を突き破って血だらけになった指は一日中、出血をし続け、軍手が真っ赤に染まる。不運にも雨だと血が止まらない。ごみを出す方は何気なく出しているが清掃員にとっては大怪我につながることもある。

©iStock.com

 記事には、「『臭いから早く持って行け』という電話がくることがある」(大阪府20代男性)という声もあげられていた。同じ言葉ではなかったが、私も似たような経験をしており、自分のことのように腹立たしく感じる。

 しかし、私が一つだけ違う思いを抱いた点がある。日本全体のごみ出しのマナーが悪くなっているということでは必ずしもないと思ったのだ。