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検事の取り計らいで妻と取調室セックス…平成最大の猟奇事件の捜査過程はなぜ不可解なのか

2020/10/22

genre : ライフ, 読書, 社会

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 サイコロステーキほどに解体した人間の遺体を、無造作に渓流に落とし流されるままにする。これは戦後最大級の猟奇事件ともいわれる「埼玉愛犬家連続殺人事件」の一場面だ。

「埼玉愛犬家連続殺人」とは、1993年、犬などのペットを繁殖、販売する会社「アフリカケンネル」を共同経営する関根元や風間博子らによって4人の人物が殺害され、同社の名目上の役員であった中岡洋介(仮名)が死体遺棄などに手を貸したとされる事件のこと。

 この事件を取材した拙著『』(サイゾー)を原作とする『実録ドラマ 3つの取調室 ~埼玉愛犬家連続殺人事件~』が10月4日午後8時にフジテレビで放送された。

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 前編ではドラマでカットされた、事件のすさまじい実態を紹介した。この記事では、なぜ共犯者の中岡が全面自供に至ったのか、そして被害者らの殺害に手を染めたとされる風間が本当に殺害に関わったのか、捜査過程や公判の謎に迫る。(全2回の第1回/第1回から読む)

捜査当局の監視対象になった関根、風間、中岡

 関根、風間の逮捕に至る供述をしたのが中岡だが、なぜ全面自供に至ったのか、ドラマを見て不思議に思った視聴者もいたのではないか。プライバシーの問題もあり、そこもテレビドラマでは描けなかった部分だ。

 1993年に起きた、埼玉愛犬家連続殺人は3件で犠牲者は4人。1件目の直後から、関根、風間、中岡は捜査当局の監視対象になったが、それをあざ笑うかのように、2件目、3件目が起きた。

罠~埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった!』 深笛義也 著

  証拠が見つからないまま年が明け、1994年2月から、関根の周辺で行方不明者が出ていることが、マスコミで報じられる。

  捜査は膠着したまま夏になったが、中岡は片品の自宅・通称「ポッポハウス」で2つ年上の久子(仮名)と暮らし始めた。しかし、中岡は組長代行を殺されたことに気づいた高田組からの報復を恐れ、警察がすぐに来てくれるところということで、久子とともに川越の久子の実家に生活拠点を移す。すぐに来てくれるどころか、家の前で警察は張り込んだ。10月2日、中岡は久子と結婚した。

  一方で捜査当局は、久子が勤務先の建設会社から、5000万円を横領していたことを掴んだ。これは痴話喧嘩のもつれによるもので、被害者の処罰感情は弱かったが、中岡を揺さぶれると当局は考えた。