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遺贈寄付で始めるやさしい社会貢献

困っている人を助けたい、社会を良い方向へ変えたい――。そんな思いの受け皿となるのが、死後遺産を社会貢献団体やNPOへ贈る「遺贈寄付」。実践するにはどんな点を知っておけば良いのか。この分野に詳しい司法書士の三浦美樹さんにお話を聞いた。

リスクのない人生最後の自己実現

三浦美樹さん
司法書士法人 東京さくら 代表
一般社団法人日本承継寄付協会 代表理事

2007年に司法書士試験合格。司法書士事務所勤務を経て2011年に開業。相続や遺贈寄付の相談を専門的に受け、NPOや公益団体向けのセミナーなども行っている。
三浦美樹さん
司法書士法人 東京さくら 代表
一般社団法人日本承継寄付協会 代表理事

2007年に司法書士試験合格。司法書士事務所勤務を経て2011年に開業。相続や遺贈寄付の相談を専門的に受け、NPOや公益団体向けのセミナーなども行っている。

「遺贈寄付は、人生最後のリスクのない自己実現の手段です。今の暮らしに影響することもないし、気が変わればやめてもいい。実は準備も簡単なんですよ」

 こう話すのは、遺贈寄付のスペシャリストで、一般社団法人日本承継寄付協会の代表理事も務める三浦美樹さんだ。

 遺贈寄付の大きなネックになっているのは「お金の準備」。同協会が2020年9月に遺贈寄付に関するアンケートを行ったところ、遺贈寄付への印象について「お金持ちが行うことだと思う」と答えた人が45.7%に上った。さらに遺贈をしない理由で最も多かったのが「今後の生活費が不安」との回答だった。

 しかし「『寄付はしたいけれど、老後が心配だからお金は取っておきたい』という人にこそ、遺贈寄付は向いているんです」と三浦さんは話す。

「もちろんお金は生きているうちに使い切るのがベスト。いつ死ぬかわからない以上、ある程度の備えは残ってしまうでしょう。そこで遺贈寄付の準備をしておけば、使いきれなかったお金にも自分の意思を反映できるというわけです」

 少額だからとためらう人には「例えば1万円、5万円なら遺贈寄付をしてもいいと考えられるなら、ぜひ実践してほしい」と励ます。「寄付をした先には、その1万円で人生が変わる人がいるかもしれません。一人一人が気軽な気持ちで寄せたお金でも、集まれば大きな力になります」。

3900円で遺言を保管できる新制度 

 遺贈寄付は死後の寄付となるため、手続きの煩雑さも心配の種となる。しかし三浦さんは「遺贈寄付は基本的に、遺言書の中に1行『どこの団体にいくら遺贈する』と記載するだけでいいので、そこまで難しくはありません。遺言を書く際に大変なのは「相続人への分配内容を考えるケースです」と話す。

 さらに2020年に、遺言をより手軽にする新制度も始まった。それが、自筆証書遺言の法務局保管制度(以下、保管制度)だ。

「遺言の種類は主に、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つ。公証役場で公証人が作成する公正証書遺言に比べ、文字どおり自筆で作成する自筆証書遺言は手軽ですが、保管面でやや難がありました。亡くなっても遺言が誰からも発見されなかったり、逆に見つかってももみ消されてしまうことがあったのです。保管制度を利用すれば、こうした課題は解消できます」

 保管制度は、1件3900円で法務局が自筆証書遺言を保管する仕組みで、紛失や偽造、破棄などの心配は不要。このほかにも、家庭裁判所の検認が不要となったり、死亡届と連動した遺言の通知制度(21年度の運用予定)、遺言の形式チェックなど、自筆証書遺言のデメリットをカバーする仕組みを備えている。ただし遺言の内容を法務局が確認してくれるわけではないため、専門家のチェックを受けておくと確実だ。

遺言は思いを伝える未来へのラブレター

 遺言は死を意識したら書くものと思いがちだが、元気なうちに準備すれば資産状況を整理するきっかけにもなる。すでに三浦さんは自筆証書遺言を書き、法務局に預けたという。その中には、遺贈寄付についても書き添えている。

「これまでの人生を振り返ると、私は必ずしも人の役に立てたわけではないし、後悔もあります。けれど、最後には必ず社会貢献できる。その確信があると、自分の人生も案外悪くないものに思えて、『今』が楽しくなるんです。そして将来に遺贈寄付が実現すれば、残された家族に、私が何を思い、何を大切にしていたのかを伝える機会になります。その意味で、遺言は未来へのラブレターでもあると思っています」

 
 

 なぜ自分が寄付をするのか、その理由や団体の選択理由なども書き添えておくと、残された家族や受け取り側の団体にも思いをしっかりと伝えられる。「特に女性は困った人たちへの共感の力が強く、寄付先を選ぶ際にも『子どもを助けたい』など具体的なビジョンをお持ちの方が多いですね」と三浦さん。

「私たちが今豊かな暮らしを送っているのは、たくさんの人たちからの贈り物のおかげです。その社会へ感謝と次世代への願いを自由に表現できるのが、遺贈寄付なんです。難しく考えることはありません。まずは一歩を踏み出してください」