殺人容疑の立件が続いたことから停止した前回の公判から約10カ月ぶりとなる2003年5月21日、松永太と緒方純子の第3回公判が福岡地裁小倉支部で開かれた。
松永の証言「逃げた。それで激怒した」
話題の事件での初の殺人についての審理ということもあり、35席分の傍聴券を求めて、485人が抽選に集まった。
法廷にはまず、いくぶん緊張した面持ちの松永が現れた。黒いウインドブレーカーに灰色のスウェットパンツという姿。右のもみあげ部分に白髪が見てとれる。続いて緒方もやや伏し目がちに入廷。彼女は白シャツにジーンズという姿だ。松永は緒方が法廷に現れても、いっさい目をくれようとはしない。
やがて裁判が始まると、人定質問に続いて、殺人罪の罪状認否ではなく、第2回公判までにやってきた3事件(少女に対する監禁致傷、42歳女性に対する監禁致傷、詐欺・強盗)の罪状認否のやり直しが行われた。なお、ここでは少女については甲女、42歳女性については乙女との表現が使われている。
証言台に立った松永は、まず甲女に対する監禁致傷について口を開いた。
「暴行と傷害については認めます。しかし、監禁するためにしたわけじゃありません。(少女が)子どもたちを面倒みよったわけで、そこからほったらかして(放り出して)逃げた。それで激怒したんです」
それを聞いた裁判長から、少女がどこに行ったのか質問され、松永は甲高い声で返す。
「友達のところに行っとったとか、本当のことを言わなくて、それで激怒したということであります」
裁判長から少女に暴行を加えたことは認めるのかと確認された松永は、「そうです」と簡潔に答え、そのうえで「現段階では留保させてもらいます」と付け加えた。
そこで留保の理由について、裁判長に改めて問われると、「監禁についてはしていません」とはっきりした声で返す。
「おカネはもらった。でもそれだけです」
続いて、乙女への監禁致傷について松永は認否を明らかにした。
「暴行については認めます。しかし、監禁目的ではない。監禁はしていません」
さらに松永は、乙女に傷害を負わせたことを認めたうえで、次のように言う。
「理由は、筋道の通らないことで頭にきたりで、暴行を加えました」
最後に乙女への詐欺・強盗について。松永はまず詐欺について話す。
「詐欺については認めます。自分がどうあれ、嘘を言い、この人からおカネを騙し取ったのは本当のことなので、それは認めます。期日とかはよくわからんのですが、捜査資料を見ればだいたい合ってます。ちょっと違うことはあるけど、だいたい合ってます」