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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

2020/11/03

genre : ニュース, 社会

 強盗については、「どういう状態で乙女がビビリあがって、おカネを渡したのかは、見てないのでわかりません」と、みずからの直接的な金銭の授受を否定したうえで、「(強盗との)評価については、はたして強盗なのか、検察官、裁判官、弁護士の方々に決めてもらうしかありません。(乙女が)おカネを渡したことは認めますが、評価はお任せするということです」と嘯いた。

 そこで検察官から、詐欺行為のなかで乙女に対してついた嘘について問われたところ、「一緒に住もうとは言いました。しかし、(同事件の冒頭陳述にあった)1月18日に結婚しようと言ったことはありません。一緒に生活しようとかは、ことある毎に言ったのは認めますが、それはない」と答えた。

 裁判長が「乙女に対しての暴行は?」と聞くと、「裁判長さん、それは違います」と遮るようにして、松永は声を上げる。

「ボコボコに殴られたり、電気を通された後に電話はできないはずでしょ。なのに、かけてる。暴行は認めます。おカネをもらうためです。乙女からおカネはもらった。でもそれだけです」

※写真はイメージ ©️iStock.com

 そう言い終えると、松永は証言台から被告人席へと戻ったが、途中で女性検察官と目が合った際に、苦笑を浮かべている姿が見てとれた。

緒方による証言「強盗については私にはわかりません」

 次に緒方への同じ順番での罪状認否が行われた。まず甲女への監禁致傷について。

「公訴事実は認めますが、納得できない点があります」

 緒方はこもった小さな声で話す。裁判長から理由を問われると、「今後、お話しするかもしれません」とだけ口にした。

 乙女への監禁致傷について、「これは認めます」と答えた緒方だが、詐欺・強盗についてはやや違った。

「事実については認めますが、強盗については私にはわかりませんので、そのへんはお任せします」

 緒方への認否はこれで終了し、やがて殺人事件についての審理に移り、松永と緒方を並べて証言台に立たせたうえで、6つの事件の起訴状朗読が始まる。その際には、松永は時折鼻の下を指先でなぞったり、上を向いたりと落ち着きがない。一方の緒方は腕を胸の前で組み、微動だにしない。