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連載近田春夫の考えるヒット

Snow Manの新曲が挑戦的 新体制のジャニーズはやたらとドラスティックだ――近田春夫の考えるヒット

2020/10/28

『KISSIN' MY LIPS』(Snow Man)/ダイアローグ(ASIAN KUNG-FU GENERATION)

絵=安斎 肇

 Snow Manの新曲に針を落とし(無論、比喩的表現です。念のため)聴いているうち、オォ、やっぱニュージャックスウィングの波は来てるんじゃん! と思ったものである。

 波の最初の兆候はEXILE一家にあった。その時はまだうっすらと気配があるぐらいの様子だったので、思い違いの可能性もあるなぁと、そんな感じだったが、次は米津玄師だ。『感電』がそれっぽかったのである。ただ、世代的にいうと、ニュージャックスウィングの頃、米津玄師は、生まれていたかどうか……。こちらも、たまたまかも知れぬ。

KISSIN' MY LIPS/Snow Man(avex)作詞:Kanata Okajima/JAKAZ、作曲:FATCAT/Siixk Jun。グループの名づけ親は滝沢秀明副社長。

 しかし、今回のSnow Manの新曲は、本当にハッキリとニュージャックスウィングの復活を示してくれていた。ほんの一瞬のことではあったが『Every Little Step』を思い起こさせるようなフレーズが聞こえてきたのだ。いわずと知れたボビー・ブラウンの大ヒットだ。これはきっとあの時代を勉強して書いている。私はそう確信したのだった。

 とはいえこのトラック、決して’90年代をただ焼き直したのではない。そこから色々な流行を咀嚼してここに至ったと申せばよいか。シンセベースひとつとっても、音色、フレーズともども相当にロックよりなものになっていたりと、サウンドの基本はニュージャックスウィングではあるのだけれど、最終的には、またかつてとは一線を画す印象を残す音響になっているのだ。「ニュー・ニュージャックスウィング」とでも呼ぼうか。

 よもやこのビートが今一度脚光を浴びるようなことはあるまいと、ずーっと高を括っていた。それはやはり、大変特徴的なリズムの故、音が鳴れば、時代の空気がたちまち蘇ってきてしまうからだ。ドドンパが、再度トレンドとして注目されることはないだろうというのと、事情は同じだ。

『KISSIN' MY LIPS』からはそうした意味での“古臭さ”は漂って来ないのである。特筆したいのはそこなのだが、気になり調べると、やはり書いたのは韓国の作曲家だった。

 この、新しき領域に進まんとするエナジーこそ、KにあってJにないものとはいい過ぎにせよ、こうした、サウンドのフィジカルな刺激を作ることに関しては、あちらの方が一枚上手なのは確かだ。

 一方歌詞は、全編英語となっていて、味わいや可愛さより専門職的なスキルを前面に打ち出した歌唱が耳に残る。

 そんなこんなでこの新曲。音も挑戦的/革新的なら、英語の歌詞もファンの核となる層にとっては、まず決して馴染みのいいものではない筈だ。これでは、ついてこられる人間だけついて来い! といっているようなものだろう。

 この事務所は、新体制になってから動きがやたらとドラスティックだ。個々のタレントをウォッチするよりも、企業としてどこへ向かって行くのかを観察する方が、面白くなってきているかも?

ダイアローグ/ASIAN KUNG-FU GENERATION(Sony Music)作詞・作曲:後藤正文。来年で結成25周年を迎える4人組ロックバンド。

 ASIAN KUNG-FU GENERATION。

 コロナ時代っぽい? 上手く言えないけどそんな感じ。

今週の別れ「作曲家の筒美京平さんが亡くなられて、俺にとって大きな存在だったんだと改めて感じているよ。大好きだったから、ホント、言葉にならない寂しさがあるなァ……」と近田春夫氏。「今年は俺より少し年上の人の訃報に触れることが多くて気が滅入っちゃうよ。人間は順番に逝くものだから仕方ないけど、時代の変わり目なのかもしれないね。合掌」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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