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公取委がまとめたタレント契約の実質的指針

 そして8月、公取委は芸能事務所がタレントと交わす契約や取引について、どのケースが独占禁止法上問題となり得るかをまとめ、実質的指針として業界に周知するに至る。具体的には次の4点だ。

・移籍、独立を諦めさせる
・契約を一方的に更新する
・正当な報酬を支払わない
・出演先や移籍先に圧力をかけて芸能活動を妨害する

 この指針が、能年が以前置かれていた立場にあまりに重なると感じるのは、本誌だけではないはずだ。

 翌9月の高裁判決は、新たに本誌の主張が認められた部分もあった。能年が撮影時に過酷な環境に置かれていた点は真実性が認められ〈違法性が阻却され、不法行為は成立しない〉。また〈報じた目的の公益性も認められる〉とされ、賠償金額も計440万円に減額。

 しかし、彼女が希望しても事務所が仕事を入れなかったことや、社長のパワハラについては、真実相当性が認められなかった。

 

本誌があえて最高裁の判断を仰いだ理由

 我が国の民事訴訟において、最高裁への上告が受理される割合は5%以下。しかし、本誌があえて最高裁の判断を仰いだのは、次の理由からだ。

〈(原判決は)芸能界におけるマネジメント会社(及びその代表取締役)と芸能人との間には、形式的には対等独立な当事者と言いながら、実質的には圧倒的に不均衡な力関係が存在するという現実を無視した経験則に反するものと言わざるを得ない〉(上告受理申立理由書)

 だが、上告は退けられた。

 のんは現在、CMなどには数多く出演。アジアでも絶大な人気を誇っている。だが常々口にする「役者をやりたい」という夢は依然叶えられていない。今年、6年ぶりに実写映画出演を果たしたものの、テレビドラマへの出演は未だない。

 のんを巡る異常な状況は、改善されていないのだ。

 事務所と芸能人の不均衡な関係――本誌がいち早く記事で指摘したのは、そこに起因する事柄に他ならない。記事の社会的意義に対する自信は今も変わっておらず、実際、公取委のメスも入り、徐々にではあるが変わりつつある。それだけに、今回の判決が、この流れを阻害するものになりはしないかと危惧する。

 芸能人と事務所の関係が健全なものになるよう、本誌は今後も取材・検証を続けていく。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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