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“菊花賞最強馬”ナリタブライアンの衝撃 「アンチ・ブライアン」記者が振り返る“取材規制”の真実

“菊花賞最強馬”ナリタブライアンの衝撃 「アンチ・ブライアン」記者が振り返る“取材規制”の真実

10月25日は第81回菊花賞

2020/10/24
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 2020年の菊花賞はコントレイルが父のディープインパクトにつづいて無敗の三冠馬になるかどうかが唯一の焦点と言っていい。

 サラブレッドの3歳の最強馬を決める三つのレース、皐月賞、日本ダービー、菊花賞に勝った馬だけに与えられる称号が「三冠馬」で、これまでに1941年のセントライトから2011年のオルフェーヴルまで7頭がその栄誉に浴している。ほぼ10年に1頭の割合で誕生しているわけだが、オルフェーヴルからちょうど10年目。ぴったりのタイミングでコントレイルが現れたことになる。

過去、「三冠」レースを最も簡単に勝ちとったのは……

 無敗で三冠を達成したのはシンボリルドルフ(84年)とディープインパクト(05年)の2頭だが、ともに菊花賞では一瞬「あわや」というシーンがあった。シンボリルドルフはゴール前でゴールドウェイに3/4馬身差まで迫られ、ディープインパクトも4コーナーでは先頭のアドマイヤジャパンに7、8馬身の大きな差をつけられていた。

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史上5頭目の三冠馬となった1994年のナリタブライアン ©文藝春秋

 7頭の三冠馬のなかで、もっとも簡単に三冠を勝ちとったのはナリタブライアンである。2着馬につけた着差を並べる。

 皐月賞、3馬身半。

 ダービー、5馬身。

 菊花賞、7馬身。

 94年の三冠路線は、わたしたちはずっとおなじようなレースを見せられた。白いシャドーロールを着けたナリタブライアンが後方から外をとおって追いあげてくると、4コーナーでは先頭に並びかけ、直線はいつも独走になった。その強さに「シャドーロールの怪物」というニックネームもうまれた。

シャドーロールはナリタブライアンのトレードマークに ©文藝春秋

 シャドーロールとは鼻面に装着して下方の視界を遮り、意識を前に集中させるための矯正器具である。ナリタブライアンを管理していた大久保正陽さんによれば、父(大久保亀治)の厩舎にいたパッシングゴール(72年天皇賞・秋2着)がシャドーロールを着けてから成績が良くなったのを思いだし、2歳のときに成績が不安定だったナリタブライアンに装着してみたのだという。