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「さんまちゃんが走って逃げてった」山田邦子60歳が語る“『ひょうきん族』実父殴り込み事件”

「さんまちゃんが走って逃げてった」山田邦子60歳が語る“『ひょうきん族』実父殴り込み事件”

山田邦子さんインタビュー#2

2020/10/31

「「男になりたい」と思っていたし、今も思ってる」。『ひょうきん族』当時の熱狂の日々と、しかし自分だけ「女性である」ことの孤独。

 山田邦子をその孤独から救い出し、しかし同時に「男性になりたい」という思いも強くさせた、ビートたけしという存在。世間に衝撃をもたらした「山田邦子丸坊主事件」に対して、たけしが発した言葉とは。山田邦子を時に苛め、しかし奥底では支えていた、もう一つの「コンプレックス」。(全3回の2回目/#1#3

山田邦子さん

◆ ◆ ◆

ビートたけしが一度だけ言った、「すまなかったな」

ーーたけしさんのどんなところにそこまで惹かれたのでしょうか。

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山田 やさしさですかね。ちょうどいいやさしさ。まずは面白い、圧倒的に面白い。あと関東で生きてきた感じが似てるのかな。たけちゃん、邦ちゃん、鶴ちゃんはみんな下町なんですよね。だからあんまりごちゃごちゃ言わない。説明がなくても「よう」とか「おう」とか言うだけで、「今日も頑張ろうな」とか「おはよう」という意味があったりするんですよね。そこらへんが分かり合えてたような感じですかね。

ーー下町の感覚かぁ。

山田 たけしさんってほんとにいつもめちゃくちゃで、刺激的な人なんですよ。新しく前に前に進んでいく。だから時にはほんとに世の中から叩かれたり、こっちが心配するぐらいなめちゃくちゃなことをするんだけど。なぜか気持ちはいつもわかるし、理由がわかることしかしないんですよね。それがかっこいいなと思ってました。

ーーまさに芸人さんが映画を撮るというのもたけしさんが先駆けでした。

山田 そう、どんどんどんどん先にいっちゃうから、必死についていってました。事務所が一緒だったということもラッキーだったんですけど、ただたけしさんがずる休みすると、代わりに私が行かされるんですよ。

ーーたけしさんの『ひょうきん族』ずる休みも、都市伝説です(笑)。

山田 「お化けが出た」って言って収録に来ないの(笑)。そうすると他のコーナーとか、局の違う番組でもたとえ夜中でも「あんた来なさい」って事務所から呼び出される。そこは鶴太郎さんではなく、間を取って私だったと思うんですけど、結果として代打として売れたので私はラッキーでしたよね。

 別に「やってやったぜ」ということもなく、淡々と「わかりました」ってやってましたけど。たけしさんから「ありがとう」なんか言われたこともないですよ(笑)。

ーーなるほど。

山田 ただ1回だけ。「すまなかったな」って1回だけ言われたのは、フライデーの件でたけしさんが軍団を連れて講談社に殴り込みに行った時(笑)。あれは長い間休んでましたので。

 

ーー昭和芸能史に残る大事件でした。

山田 たけしさんも軍団も芸能活動は自粛になって、私と、残ってる軍団の何人かで、生放送やなんかをつないでたんですね。その後たけしさんは何事もなかったように戻ってきて、さっと代わりましたけど。ただ、なんの仕事だったか、他で会った時に、一言だけ「すまなかったな」って言われました(笑)。でもそれでもう十分でした。

ーーもしかしたら、ずっと言いたかったのかもしれませんね……。