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「相手の話をきく約束ですよ。いいですね?」「だって…」「理由を聞いたんじゃありません!」米国大統領選挙の討論会でトランプが見せた“駄々っ子”ぶり

――言霊USA「Stand back and stand by.(いったん下がって待機せよ)」

2020/10/28

 連邦最高裁で、国民の平等と自由を守るために戦ってきたルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の棺は、連邦議会議事堂に安置されることになり、一時安置されていた最高裁に全米から彼女を惜しむ人々が訪れたが、9月24日、棺の周りで激しいブーイングが湧き上がった。

 トランプ大統領が現れたからだ。彼はギンズバーグの死が報じられたその日に、すぐに欠員を埋めると宣言した。保守系判事6対リベラル系判事3で最高裁を多数支配しようというのだ。というのも、11月の大統領選挙で自分が負けた場合、投票に不正があったとして最高裁に勝敗を委ねるため。

トランプ大統領 ©JMPA

 26日、トランプは判事候補にエイミー・コニー・バレットを指名した。彼女は48歳、史上最年少の最高裁判事になる。なにしろ2017年に連邦控訴裁判所で働き始めてから約2年11ヶ月しか判事としての実績がない。ギンズバーグは控訴裁判所判事を13年務めてから任命されたのにね。

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 バレットが選ばれたのは熱心なカトリックだから。中絶どころか避妊にも反対しており、自らも5人の子供を生んでいる。また、保守的カトリックだった最高裁判事アントニン・スカリア判事の実務官として彼の「原意主義」を引き継いだ。それは「憲法を書いた者が意図した以上の拡大解釈をしない」主義で、建国当時は白人成人男子の納税者だけに認められていた人権を女性や他の人種にも拡大していくリベラルな憲法解釈に真っ向から反対するものだ。バレットが判事に加わった最高裁は、人工中絶や同性婚、オバマケアなど、ギンズバーグが守ってきた国民の権利を次々に抹消していくだろう。国民の3割を占める保守的キリスト教徒は大喜びだ。トランプはこれで彼らの票を獲得できる。投票日46日前のギンズバーグ死去は、トランプにとって棚ぼただった。