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2020/10/29

ミシガンを解放せよ!

 ウィトマー州知事(49歳)は民主党のホープ。歯に衣着せぬ言い方でトランプ大統領のコロナ対策を批判し、ミシガン州のロックダウンを続け、ビジネス再開を求めるトランプから「あの女はわかってない」と批判されていた。

 4月にはトランプが「ミシガンを解放せよ!」とツイートした。いわゆる「犬笛(信奉者に向けた攻撃指令)」を吹いたわけだ。案の定、それに煽られた3000人のトランプ支持者がライフルで武装して州庁舎に押し寄せてロックダウン解除を求める事件も起こった。3000人だから、内戦というのも大げさな言い方ではない。

グレッチェン・ウィトマー州知事 ©AFLO

 この誘拐計画について、ウィトマー州知事は記者会見で、責任はトランプ大統領にあると語った。

「国のリーダーは何かを語る際に責任を持つべきです。大統領が国内のテロリストを応援し、共感を示すのは、彼らの行動の承認であり、共犯です」

 でも、このテロの首謀者のアダム・フォックスについて知るとちょっと哀れになる。彼は37歳無職。掃除機修理店で働いていたが、店の経営難で解雇された。金も、住む所もないフォックスは店長に頼み込んで、店の地下室にタダで住まわせてもらった。そこでフォックスは爆弾などを作り、州政府襲撃計画を準備していた。

 フォックスのような失業者は大勢いる。9月の全米失業率は8%でコロナ前の2倍だ。景気はワクチンが普及する来年春まで回復しないと言われる。早急な給付金による救済が必要だが、トランプ大統領は下院議会との給付金の交渉を11月3日の投票日まで停止すると発表した。

「私が選挙で勝ったら、大型の景気刺激策を通過させてやる」

 つまり給付金を人質に取ったわけだ。トランプ軍団はミシガンだけで収まりそうにない。

まちやまともひろ
1962年生まれ。映画評論家。米カリフォルニア州バークレー在住。この連載をまとめた最新刊『トランピストはマスクをしない』(小社刊)の発売記念「町山智浩×水道橋博士×原カントくんオンライントーク」のYouTube動画はこちらから→
BS朝日「町山智浩のアメリカの今を知るTV In Association With CNN」は毎週金曜日22時24分〜放送中

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