各地でクマの出没による被害が相次いでいる。
環境省によると、全国のクマ類(ヒグマ含む)による人身被害は、2018年度は51件、昨年度が140件に対して、今年度は9月までの速報値で既に80件に達し、10月には秋田県でクマに襲われた80代の女性が死亡している。
「今年度が異常なのは、出没件数もさることながら、出没する“場所”です。死亡した女性が襲われたのは、住宅街でした。他にも温泉街のど真ん中や駅前の商業施設など、これまでクマが出たことのない場所に突如現れ、パニックになるケースが多い」(社会部記者)
いったいクマに何が起こっているのか。
「クマの大量出没には様々な要因がありますが、今年についていえば、コロナ禍の影響もあるでしょう」
そう指摘するのは、40年以上クマの生態を研究している日本ツキノワグマ研究所の米田一彦理事長だ。
「特に夏までは外出自粛の影響で車や人通りが減少し、市街地中心部にクマの出没が続きました。秋以降の出没は夏の長雨と記録的な日照不足などにより、山でドングリ類が不作になったことによります」(同前)
だが、クマの大量出没には、こうした短期的な要因以上に、構造的な要因が影響しているのだという。
「一言でいえば、里山の荒廃です。かつての里山は、炭焼きや草刈り場として人間の手が頻繁に入っていました。ところが最近は里山を管理する人が減り、里山が奥山化し、そこに若いクマやメスのクマが入り込んだ。彼らは奥山にいる大きくて強いオスのクマから逃げてきたのです」(同前)
そうして若いクマやメスのクマが人間の生活圏とほど近い里山に住み着いた結果、両者の接近遭遇の機会が増えたのである。