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連載この鉄道がすごい

銚子電鉄制作、ホラー映画(?)『電車を止めるな!』が意外にも感動作だった

銚子電鉄制作、ホラー映画(?)『電車を止めるな!』が意外にも感動作だった

B級ネタ映画だと油断していたら……

2020/11/01
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 銚子電鉄が制作、公開中の映画『電車を止めるな!』を拝見した。正直に言う。おもしろかった。低予算B級映画として、B級らしさという意味でも上出来、後半はじんわりと涙する場面もある。制作者が社名にひっかけて「超C級(銚子級)」と自虐したけれど、それはダジャレを言いたかっただけの謙遜だ。

鑑賞券は銚子電鉄の1日乗車券付き。かなりおトクだ

鉄道映画という狭い分野に閉じ込めてはいけない

 タイトルをあやかった『カメラを止めるな!』のように大爆笑という展開ではないし、某鬼退治アニメのように涙が溢れるほどではない。それでも物語はしっかりしているし、配役は舞台で活躍する実力派を揃えた。主役の銚子電鉄社長、蔵本勝介役はコウガシノブ。舞台で古賀司照の名で活動する個性派俳優だ。乗客の中心人物「心霊アイドル めむたん」役は末永百合恵。ドラマ『特捜9』にたびたび登場した。

 有名人としては中田敦彦(オリエンタルラジオ)、日野日出志(怪奇漫画家)が友情出演。日野は銚子電鉄のお菓子「まずい棒」のキャラクター「まずえもん」を手がけている。スペシャルゲストとして片岡馨(プリティ長嶋)が出演する。片岡は千葉県議会議員の3期目を務めており、本作と銚子電鉄を応援しているという。

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 鉄道ファンとしては、鉄道ファンで知られる女優の村井美樹、鉄旅タレントの木村裕子の出演も見どころの1つ。ローカル鉄道演劇『銚電スリーナイン』に出演した谷口礼子、千田剛士も登場する。谷口は蔵本社長の妻という重要な役どころ、千田は今作も銚子電鉄の社員役を好演する。

車庫で保存されている元丸ノ内線の電車。原作小説では会議室として使われていた

『電車を止めるな!』は鉄道を前面に押し立てた映画だけれど、いままで銚子電鉄を知らなかった人も「千葉県銚子市のご当地映画」として楽しめる作品だ。鉄道映画という狭い分野に閉じ込めてはいけない。B級作品も含めて映画好きな人、とくにタイトルをあやかった『カメラを止めるな!』を楽しめた人に、ぜひ観てもらいたい。

冒頭3分を無料公開

『電車を止めるな!』を観るために必要な最低限の知識は、映画の冒頭部分に集約される。大胆にもネットで短縮版が無料公開されている。

冒頭3分間を特別公開! 映画『電車を止めるな!』本編映像

 銚子電鉄の社長、蔵本勝介の講演会だ。まずは「電車屋なのに自転車操業」とギャグを飛ばして観客を注目させる。講演は、過去と現在の写真を比較し、経営がどんどんマズくなっているという内容だ。笑いを取りつつも悲壮感が漂う。実際の銚子電鉄も経営努力が足りないわけではない。経営不振の背景はモータリゼーションと少子高齢化、地方鉄道のほとんどが直面する問題だ。