10月26日に行われた王将戦挑戦者決定リーグ3回戦で敗れ、最年少三冠、最年少九段こそ“お預け”になったものの、藤井聡太二冠(18)の活躍が続いている。
その強さの秘密について、“天敵”棋士が語った。(「週刊文春」2020年9月3日号より全文転載。日付、肩書、年齢等は掲載時のまま)
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「『藤井時代』がいよいよ始まるのかも知れません」
そう語るのは他でもない、藤井聡太二冠(18)の師匠、杉本昌隆八段(51)だ。
7月に棋聖位を獲得し、史上最年少タイトルホルダーになった藤井だったが、8月20日、木村一基王位(47)に挑戦した七番勝負を4連勝で制し、瞬く間に“藤井二冠”になった。
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「タイトルホルダーは五番か七番勝負で挑戦者を退ければ防衛できる。つまり3勝2敗、4勝3敗でよい。逆に挑戦者からすれば、通算勝率が8割を超える藤井に、番勝負で勝ち越すのは至難の業でしょう」(同前)
一度タイトルを獲れば極めて失冠しにくいのが藤井。実際、2つのタイトル戦でも計7勝1敗と短期決戦での強さが際立った。
藤井の強さを、タイトル二期獲得の広瀬章人八段(33)はこう表現する。
「藤井さんは一つの局面で、常に妥協なく最善の手を探します。そして、ソフトが最高の評価値を示す一手を見つけ出す能力が非常に高い。今後、5年くらいの間に八冠を全制覇したとしても、驚きはないです」
飯島栄治七段(40)も率直に言う。
「すでに全盛期の北の湖やV9時代の巨人のように、“強すぎて憎まれる”存在になりつつあると言えます」