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2020/11/14

source : ライフスタイル出版

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済

「引きこもり」が里山の「歩哨」として暮らす

――てっきり農夫かわいそうと思って観てました!

内田 映画では農夫たちが勝つわけですけれど、その農夫たちも、それから半世紀後には大恐慌のときに銀行に土地を奪われて、都市プロレタリアートに没落していく。19世紀のイギリスで起きたのと同じことがそのままアメリカでも繰り返されたのでした。

 西部開拓の時のコモンの私有化によってアメリカの農業生産力は劇的に向上しましたけれど、自営農となったと喜んだ農民たちも、やがて必然的に没落する。たしかにコモンを私有化すれば一時的に土地の生産性は上がるのですけれど、「土地の有効利用」を根拠として土地を私有化したものは、「それよりさらに高い生産性で土地を有効利用できる」という大資本家には理屈では勝つことができません。経済合理性を楯にして何かを奪ったものは、いずれ同じロジックで得たものを奪われるということです。

 僕が提案する「逆ホームステッド」法は、放置された私有地や無住の家屋を自治体が接収して、コモンにして、そこに住んで5年間生業を営んだ人に無償に近いかたちで払い下げるというアイディアです。里山に再び人を呼び戻すためには、よい方法だと思います。

 

 もう1つアイディアがあるんですけれど、それは「引きこもり」の人たちに「歩哨」をしてもらうというものです。

 一説によると、日本にはいま100万人の「引きこもり」がいるそうです。その人たちに過疎の里山に来てもらって、そこの無住の家に「引きこもって」もらう。里山だと「そこにいるだけで」、里山を自然の繁殖力に呑み込まれることから守ることができる。部屋にこもって1日中ゲームやっていても、ネットをしていても、それだけで役に立つ。

 それほどの給料は払えないでしょうけれども、人がいなくなった集落でも、お盆のときだけは戻ってくるから、家は廃屋にしたくないという人はたくさんいます。そういう何軒かの家からちょっとずつ出してもらえば、仕事になる。家賃は要らないし、物価だって安いし、気が向いたら、畑を耕して野菜だって作れる。

 そういうミクロな求人とミクロな求職をマッチングする仕組みができれば、かなりの数の「引きこもり」が里山の「歩哨」として暮らして、かつて西部開拓者が経験したような達成感や全能感を経験して、メンタル的に回復するというようなことが起きるんじゃないか。そんなことをぼんやり夢想しています。