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連載近田春夫の考えるヒット

10-FEETの新曲は70年代そのもの あの時代にあって今はない“明るさ”はどこから?――近田春夫の考えるヒット

2020/11/12

『シエラのように』(10-FEET)/『ハニーメモリー』(aiko)

絵=安斎 肇

 最近の日本のロックといったら、大方がダークな感じではないだろうか? 原因のひとつは和声にもあると思う。コード進行の織りなすものがそうさせる可能性はある。その点は、昔は違ったかも。

 10-FEETの『シエラのように』のイントロが始まった途端、そんな思いがアタマをよぎった。

シエラのように/10-FEET(EMI Records)作詞・作曲:TAKUMA。1997年結成、京都府出身の3ピースバンド。メンバーは全員40代。

 このグループ、もう相当のキャリアなのだそうだ。まさか60歳とか、そこまではいっていないとは思うが、そのぐらい、とにかく音が本気で’70年代そのものなのだった。あの時代にあって今はない明るさ。そこが今回の狙いなのか、本来がそうした音楽性を兼ね備えたバンドだったか、そこは分からないが、この音の持つ、いい具合の“いなたさ”(洒落てない)には妙に心が和まされる。戦略or体質?いい換えればそのような話にもなろうかと思うが、例えば件のイントロである。(映像では)曲の始まる前にハイハットをシャンシャンシャンシャンと打ち鳴らし、カウントを取っているのだが、これなど、今の一般的な録音現場では全く必要のないことだ。それを敢えてしてみせる。はて、演出なのかこだわりなのか?

 画を観ながら、音を聴きながら、そんなどうでもいいようなことをあれこれと考えるのも、私にとっては、jpopと時間を過ごす時の大いなる楽しみのひとつなのだが……。

 いずれにせよ、このこうした有機的なサウンドプロダクションが、デジタル100%に近い作りのjpop漬けの若い人たちにとっては、却って新鮮に響くことも、想像は付く。

 一方、歌詞に目をやると、そこはやはり現代のものだなとも思う。例えば冒頭である。

 ♪どうやらここでお別れみたい

 普通でいえばいわゆる“女言葉”の部類のいい回しだろう。歌詞全編そうしたメンタリティなのだ。が、一人称はしっかりと“僕”なのである。

 ま、こんな、いってみれば“女性性の強い男”などはウジャウジャいるご時世なのだし、だからこそ! 楽曲も支持されるのだとは百も承知なのだけれど、俺なんか昔の人間だから、いちいち歌詞を読むほどに、こんな煮え切らない男なんか、ふられて当たり前じゃん! とついつい腹が立ってきて“突っ込み”のひとつも入れたくなってしまう。

 まぁそれもjpopの楽しみ方のひとつではあるな(笑)。

 楽しみといえば、あとよくやるのが、アタマのなかで勝手にコレ、誰がカバーしたら“くる”かなぁ? とか音をイメージしてみるという“遊び”なんですけど、例えばこの曲の場合、鳥羽一郎どうすかね? 想像してみてくださいませな。結構凄いものが待ってる気もするんで……。

 いや、真面目な話。意外な人によるカバーってのは面白いと思うのよ。俺も昔そういう意味で『電撃的東京』っての出したら受けたから。誰かアルバム作ってみてはどお?

ハニーメモリー/aiko(PONY CANYON)通算40枚目のシングル。1975年、大阪府生まれのシンガーソングライター。

 aiko。

 いや、この声の“年齢不詳感”には圧倒されましたです。

今週のクエスチョン「寒くなるにつれて、コロナはもちろん、風邪やインフル予防のためにマスク需要はますます高まるんじゃないかな」と近田春夫氏。「ときに、真ん中に縫い目がある立体マスクって、上下と裏表が分かりづらくて困っちゃうよね。パッケージの裏側に正しいマスクのつけ方を書いてもらえるとすごく助かるなァ。メーカーさん、頼むよ!」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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