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連載名画レントゲン

2020/11/11

 ミレー自身には特別な政党的意図はなかったようですが、それとは関係なく、農夫の種をまく姿は当時の人々の目に、2年前の48年2月の民衆による武装蜂起を想起させたよう。この絵は社会主義者・共産主義者からは共感を得て、牧歌的な農村画を見慣れていた保守層からは自分たちを脅かすものと受け取られたのです。

 それもこれも、この絵がそれだけ「力強い」からこそ。その力強さはどこからくるのか考えてみましょう。

圧倒されるサイズと、対角線構図のダイナミズム

 なんといっても、99.7cm×80.0cmという絵のサイズの圧倒感です。等身大とまではいかなくても、モニュメンタルな規模に描かれた農夫はそれだけで威厳を感じさせます。

 そして、対角線構図と呼ばれる配置が生むダイナミズム。農夫の体幹の角度と踏み出した右足は左上/右下の対角線、曲げた左腕と後ろに引いた足が右上/左下の対角線に沿っています。振り下ろした右腕は、その動きを強調するように後者の線と平行に。そして坂の稜線が、体を貫くように左上から右下に走ってX状を形成。水平・垂直を中心軸にすると安定して見えるのに対し、斜線による構成は画面に躍動感をもたらします。また、土のような色合いと、荒々しい筆致もテーマとマッチしています。濃い色は淡い色に比べて重量感があり、それもまた迫りくるような印象を生みますね。

中央の対角線を柱にいくつものX状が形成されている

 なお、この絵には瓜二つの作品がボストン美術館にあります。先に描かれたのはX線調査などから、ボストン美術館所蔵作のようですが、サロンに出品されたのがどちらかは不明なまま。ミレー研究者なら、タイムマシンで確認してみたいのは、きっとこの件なはず。

INFORMATION

「コレクション展A(常設展)」
山梨県立美術館
秋季展示期間 ~12月6日
https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/

●美術館の開催予定等は変更になる場合があります。ご来館前にHPなどでご確認ください。

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