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安藤優子が「34年のフジ生放送生活」を終えて気づいた“押しつけがましさ”

「文藝春秋」12月号「巻頭随筆」より

2020/11/14

 フジテレビでの生放送生活にこの9月でピリオドを打った。今は亡き逸見政孝さんとコンビを組んだ夕方のニュース「スーパータイム」から、木村太郎さんと一緒に立ち上げた夜のニュース「ニュースJAPAN」、そしてまた夕方に戻っての「スーパーニュース」を卒業して、お昼の情報番組「直撃ライブ・グッディ」まで、なんと34年もフジテレビに通い、毎日生放送に臨んだ。

安藤優子さん ©文藝春秋

 その日常のルーティンがぼかっと無くなり、私にとってまさに「新しい日常」が始まったばかり。そんなある日の早朝急にダンナを職場まで送らなくてはならない事情ができて、我が家の犬2匹も乗せて、3週間ぶりにフジテレビのあるお台場に行った。犬を連れて行ったのは、ついでに近くの公園で朝散歩を済ませてしまうためである。誰かを送りにお台場に行く、という状況がやたら新しく、しかも犬連れ、不思議な感じだった。ガラガラの「お台場海浜公園」の駐車場に車を入れ、犬を降ろして散歩をした。

「あの建物の中で」髪の毛振り乱して生放送をしていた自分

 人影もまばらなお台場の公園、ランニングウエアでさっそうと朝ランする女性、ご夫婦らしき年配の男女がゆっくりとウォーキング、海に向かってストレッチをする若めの男性、などなど、それぞれの時間をそれぞれに過ごしている。ものすごく平和。とても静か。で、見上げれば大きな球体を戴いたフジテレビの社屋が。

©文藝春秋

 あの建物の中では今このときもすさまじい勢いで人が動き、走り、怒鳴り、叫び、生放送を送り出していると思うと、そのすぐ足元の公園の風景は別世界である。ほんの少し前までは「あの建物の中で」髪の毛振り乱して生放送をしていた自分は、「あの建物の外」の営みの空気にどれほど気づいていたのだろうか。