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2020/11/14

ニュースをお伝えする仕事をし始めて40年

 ニュースをお伝えする仕事をし始めて40年が経った。何を伝えるべきか、どう伝えるのか、毎日それなりに悪戦苦闘してやってきた。戦争があり、災害があり、飛行機事故が起き、政治が動いた。理不尽としか言いようのない無差別殺人があり、たくさんの命が一瞬で奪われる事件も多々起きた。毎日ニュースの発生しない日はなく、刻刻と変わる情勢に目を凝らし、どこよりも早く、しかも正確であることを心掛けた。かなり必死だった。

©文藝春秋

 でもどうだろうか。犬と散歩しながらふと目にした「あの建物の中で」実は一人「ニュース祭り」をしていただけではなかろうか、とそんな気がしたのだ。「これは大変なことになった」と意気込んでニュース速報をお伝えするとき、それがどれほど「建物の外」の人たちにとって重要なのか、どれほど意味があることなのか、私は思い及んでいたのだろうか。「建物の外」には、静かに流れる時間があり、変わらぬ個々人の営みがある。

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「たった今入ったニュースです」と勢いこんで速報を入れても「それがどーした」という反応の世界の存在に気づかされた朝だった。ニュースのリードと呼ばれる短い前説部分に時折「驚くべき〇〇」という文言が使われることがある。「べき」などとはなんと押しつけがましいことか。と思って「べき」表現が原稿に出て来るとそっと削除していたのだけれど、「今入ったニュースです!」も同じくらいある意味押しつけがましかったかも、と思った。