文春オンライン

“絶対に笑ってはいけない”ガースー内閣 「全集中の呼吸」で繰り出すフリとオチの結末

「こうしつおんかガス」に潜む危険性

2020/11/10
note

 いま一番面白い人は菅首相ではないか。

 まずフリとオチがしっかりしている。

「鬼滅の刃」が大ブームとなっているが菅首相も国会で「『全集中の呼吸』で答弁させていただく」とセリフを引用して世間の話題を誘った。すると学術会議の件が説明になっていないとして野党から「集中審議」の開催を求められる展開となった。

ADVERTISEMENT

「全集中」で答弁した菅首相 ©JMPA

 菅さんのフリとオチが全集中の呼吸で素晴らしい。

 所信表明演説では「温室効果ガス」排出を2050年までに実質ゼロとする目標を高らかに掲げたが、菅首相はそのあとの衆院予算委員会で「こうしつおんかガス」と言ってのけた。

一国の首相が自分の政策を言い間違える“意味”

 いや、誰だって言い間違えはある。

 だけど普通のおじさんではなく実質ゼロ目標を宣言した一国の首相だ。

 ここまで間違えると自分の政策に興味無いのかと思わせる。たとえば歴史を熱く語っている人が豊臣秀吉のことを「とよとみひできち」と言っていたらこの人は大丈夫か? と思うだろう。それと同じ。

話題の「鬼滅」の勢いにあやかろうとしたものの…… ©時事通信社

 同じ間違いでもASEANをアルゼンチンと言うとか、「期待はそこにある」を「期待はそこそこにある」と読み間違えるのはご愛敬だ。

 しかし「温室効果ガス」を「こうしつおんかガス」と言ってしまうのは大事なものがガラガラと崩れ落ちてゆく。これもフリとオチだったら菅さんかなり攻めてる。

  まだあった。学術会議会員候補6人の任命拒否の理由について菅首相は先々週ぐらいから「多様性を念頭に置いたため」と言い始めた。若手が少ない、一部大学に偏りがあるなど。

 しかし現在、東京慈恵会医科大の会員がいないのに、同大の小沢隆一教授を任命しなかったこととも整合性が取れない(毎日新聞WEB11月8日)。ほかにも1人しか所属していない立命館大の教授もいるなどすぐに反論された。すごい。