2人に共通しているのは、若い頃にいきなりブレイクしたわけではなく、映像作品では目立たない脇役を多数こなしてきた下積み時代が長く、舞台経験が豊富で、努力家で、現在の地位や評価を得るまでに時間がかかったタイプということ。
そして中村も高橋も、佐藤のような分かりやすいイケメンではない。
笑うとなくなってしまうような切れ長の目や、口角の上がった薄い唇、控えめな鼻などは芸能界のなかでは“地味顔”だ。だが彼らからは上品な色気や、人間性の厚みなどが匂い立ち、それを感じ取ったファンたちがまた「倫也の魅力を一番理解しているのは私」「一生は私だけが分かっている」と魅了される。
だからこそわかりやすいイケメン役よりも、視聴者側の“読解力”が必要とされる作品や役柄が望まれることが多いのだろう。中村も高橋も魅力が隠されれば隠されるほど、ファンが歓喜して魅力探しに熱を上げる。「あの人のどこがいいの?」と聞かれれば聞かれるほど。どつぼにハマっていく、とても稀有な存在なのだ。
『恋あた』が本格的に面白くなるのはこれから
とはいえ、「恋あた」の浅羽社長も、初回の印象で「脱落してしまった」というファンがいる一方、回を重ねるごとに、中村倫也が演じるからこその魅力がじわじわと高まってきている。
単なる“ドS”ではなく、淡々とした中に、ふと口元に滲む嬉しそうな様子や、冷たそうな目の隅に見える穏やかさ、優しさ。微妙な声のトーンに宿る温かさ。表情の変化が乏しいポーカーフェイスの役だからこそ、グッと抑えた表現の中から自然に漏れ出てしまう感情に、思わずドキリとさせられてしまうのだ。
中村は分かりやすい王道キャラクターであっても、魅力を“出し惜しみ”することでファンが胸キュンすることをよくわかっているのだろう。直接的な胸キュンテク満載だった「恋つづ」の佐藤健とは、また違ったテクニックだ。
「恋あた」が本格的に面白くなるのは、おそらく浅羽社長の魅力がじわじわと浸透してくる、これからの展開だろう。
