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しつこく追いかけてくる「太陽」 はたして逃げ切れるのか!?《話題沸騰のSFスリラー》

2020/11/16
 

「その手があったか!」と、思わず舌を巻いた作品がある。SFスリラードラマ『イントゥ・ザ・ナイト』だ。ネットフリックスによる初のベルギー作品として今年5月に配信されて以来、世界中で大きな話題となっている。

 物語はある日突然、太陽に謎の異変が生じ、日光に曝(さら)されるとあらゆる生物が死滅する世界で展開する。登場人物は、モスクワ行きの航空機に乗り合わせた人種、国籍、宗教もバラバラな乗客たち。彼らは太陽光から逃れるため、補給のための離着陸を繰り返しながら西へ西へとフライトを続け、夜の闇を彷徨い続ける。

 このドラマが出色なのは、“設定”の妙にある。最も感嘆させられるのが、しつこく追いかけてくる敵が「太陽」である点。ターミネーターのような頑強な相手でもなく、放射能やウイルスといった見えざる敵でもない。毎朝、私たちを照らし、地球上のあらゆる生命を支えている“母なる存在”が全人類の生命を脅かすなんて、これまで誰も考えつかなかった発想だ。

 さらにこのドラマの設定は、制作側にとって好都合な条件が整っている。主な出演者は、10人程度の乗客乗員のみ。撮影は回想シーンを除けば、機内という密室か、補給で立ち寄る真夜中の空港などに限られる。人間の姿が跡形もなく消えた世界で物語が展開するため、大量のエキストラも必要としない。撮影場所は、営業時間後の空港や建物を借りて行える。つまり、低予算・省エネ設計で制作が可能なのだ。

 その上で、個性や背景の異なる乗客乗員たちの不協和音が、緊迫感あふれるサバイバルドラマとして展開する。人智の及ばない自然の脅威に人類はどう立ち向かうのか。乗客たちの姿は、まるで現代の人間社会の縮図のようだ。

 新型コロナによってエンタメ業界も様々な制約を受ける中、アイデアや工夫次第で面白い作品が生み出せることを再認識させてくれる一作だ。

INFORMATION

『イントゥ・ザ・ナイト』
https://www.netflix.com/jp/title/81008221

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