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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

2020/11/17

genre : ニュース, 社会

長時間に及ぶ検察側の冒頭陳述

 続いて検察側が冒頭陳述を読み上げる。そこでは6人の被害者それぞれの身上、経歴等に始まり、本件各犯行に至る経緯等として、松永が経営していた布団訪問販売会社「ワールド」の業務内容や、同社で暴力によって従業員を意のままに支配した経緯や状況なども説明された。

写真はイメージ ©️iStock.co

 その後、松永と緒方が出会った経緯、さらには松永が緒方を支配下に置いた経緯と状況が詳らかにされ、やがて「ワールド」が破綻したことで福岡県柳川市から逃亡。同県北九州市に移り住む流れが明かされる。

 それからは6人の被害者のうち、まずは広田由紀夫さんについて、出会いから殺害、遺体の損壊、遺棄の状況に至るまで具体的に語られてゆく。

 やがて緒方家のうち、これまでに起訴された5人についての、虐待から殺害に至るまでの経緯の説明がなされた。孝さん、和美さん、智恵子さん、佑介くん、花奈ちゃんという殺害順に、起訴状をはるかに上回る具体的な言葉で、予想していた以上に詳しく開示されたことから、法廷内にどよめきが生じる。

 そうした検察官による冒頭陳述の様子を、松永はときには首を傾げ、それは違うというふうに首を横に振ったりしながら聞く。一方の緒方は、手元にあるメモ帳にときおりなにかを書き込むくらいで、微動だにしない。

 長時間に及ぶ検察側の冒頭陳述が終わると、松永弁護団は、松永関係の乙号証(被告人の供述調書)が提出されていないことを訴え、「冒頭陳述立証関係の乙号証が出て、最低でも2週間は経たないと、認否はできないし、冒頭陳述もできない」と主張した。

 そこで裁判長は裁判官、検察官、弁護人の3者協議を行うために、休廷を宣言。やがて開廷してから、次回の公判は6月25日の午前10時30分からで、そこでは監禁致傷、詐欺・強盗の証拠調べと、殺人の控訴事実に対する弁護人の申し立て、さらに検察側冒頭陳述への釈明要求をできるようにしたいと述べ、閉廷を告げたのだった。

 その後、それぞれが手錠と腰縄をつけられての退廷時には、松永と緒方が互いに視線を交わすことはなかった。