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午前3時起床、週6日の勤務…大型トレーラー運転手として激務を送る30歳女性の日々に迫る

『ルポ トラックドライバー』より #2

2020/11/21

genre : 社会, 働き方, 読書

 インターネット通販の台頭や、コロナ禍による巣ごもり需要の増加を要因に、宅配業者の需要は増加の一途をたどっている。しかし、重労働というイメージがあるためか、ドライバーは慢性的に人手不足が続いているというのが実情だ。なかでも運転の難易度が高い大型トレーラーのドライバーは、団塊世代の定年を迎え、空前の人手不足に見舞われている。

 刈屋大輔氏の新著『ルポ トラックドライバー』では、そんな大型トレーラーの運転手として働く女性に密着した。彼女はなぜ大型トレーラーの運転手という職業を選んだのか、激務の日々を過ごす女性の思いを、同書より引用し、紹介する。

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大阪港で海上コンテナを搬出入

 どんよりとした梅雨空が広がった2020年6月下旬。この日の同乗取材の待ち合わせ場所は、大阪・泉大津港のフェリーターミナル近くの岸壁沿いにあるトラック置き場(駐車場)だった。現地に到着したのは午前6時。土曜日だったせいだろうか。早朝にもかかわらず、駐車場近くの岸壁は魚釣りを楽しむ親子連れで賑わっていた。

 この辺りではいったいどんな魚があがるのだろうか。釣果を確認しようとベテラン風の釣り人のバケツを覗き込んでいると、携帯電話の着信音が鳴った。その日取材でお世話になる女性トラックドライバーのユミさん(仮名)からの着信だった。「いまどちらにいらっしゃいますか?」

 どうやら私は待ち合わせ場所を間違っていたようだ。土地勘がないうえに、周囲は同じ構造をした平屋の倉庫が立ち並ぶだけの殺風景な場所だった。慌てて目に入った数百メートル先にあるガソリンスタンドの存在を伝えると、「ではそこで落ち合いますか」とユミさん。スーツケースを引きながら小走りでスタンド前に向かうと、手入れの行き届いたピカピカに輝く大型トレーラーが停まっていた。その運転席にはサラサラのロングヘアーで口にはマスク、紺色の作業着姿のユミさんが座っていた。

©iStock.com

 ドアをあけて助手席によじ登る。座席後方のスペースにスーツケースとカバンを置かせてもらう。互いに簡単な自己紹介を済ませた後、大型トレーラーはその日最初の仕事先だという大阪南港に向けて出発した。

 ユミさんは大型トレーラーで海上コンテナを運ぶ仕事をしている。海上コンテナとは、国際貿易を行う海上輸送などに使用するモノを納めるための容器だ。主なサイズは20フィートや40フィート。種類としては常温品を運ぶためのドライコンテナや、冷蔵・冷凍品を運ぶためのリーファーコンテナなどがある。コンテナはトレーラーの荷台部分であるシャーシに載せて輸送する。

 ユミさんは主に大阪港(稀に神戸港も)で積み降ろしされる海上コンテナを扱う。港のコンテナターミナル内のコンテナヤードで海上コンテナを積んで、客先(物流拠点など)まで運ぶ。または、客先から荷物が入った状態や空の状態の海上コンテナを預かり、コンテナヤードに搬入する。コンテナヤード間やコンテナヤード内で海上コンテナを動かす回送業務も担当している。