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“苦労人”菅総理の知られざる「既得権益」…破産した実弟はなぜJR企業に再就職できたのか

2020/11/19
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「ジーライオンという神戸の外車ディーラーで役員をしている菅さんの弟のことを知っていますか。弟さんのことはこれまであまり触れられなかったけど、菅さんにはどうやら隠したい事情があるで……」

 ある財界人から尋ねられたこのひと言が、今回の取材を始める端緒になった。時期は安倍晋三前首相が退陣会見を開く少し前の8月中旬、持病の潰瘍性大腸炎再発が伝えられ、政界がざわつき始めていた頃である。

 今から振り返れば、このあとすぐ「ポスト安倍は菅で決まり」と官邸の一部が騒ぎ始めたので、くだんの財界人は菅義偉政権誕生を見越し、実弟のことを探ろうとしていたのかもしれない、とも感じる。

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菅義偉首相 ©文藝春秋

「ジーライオン」とはどんな会社か?

 3歳下の菅の実弟、秀介についてむろんその存在くらいは知っていた。しかし、どこで何をやっているか、まったくノーマークだった。さっそく秀介が役員を務めているというジーライオンを調べてみると、創業者の田畑利彦がBMWやフェラーリの中古車販売で売り上げを伸ばし、宮内庁御用達の蒲鉾「小牧」や和菓子の「千鳥屋総本家」、有田焼の「深川製磁」、石川県の「加賀観光ホテル」といった名門、老舗企業を次々と買収。ジーライオングループはいまや100社ほどに上る企業集団に成長している。

 2018年11月に田畑の息子が結婚した帝国ホテル大阪での披露宴には、官房長官時代の菅本人が駆け付けていた。タレントのデヴィ夫人もそこに招待された1人で、自らのブログで片っ端から招待客の顔ぶれを紹介。

 ブログに従って菅以外の招待客をざっと挙げると、<内閣官房副長官、衆議院議員方、三菱自動車CEO(最高経営責任者)、ユー・エス・エス社長、大和ハウス副社長、三井住友ファイナンス&リース社長、総本山醍醐寺座主、オリックス自動車社長、プリンス海運社主、ヤマト運輸社長、大阪観光協会理事長、みずほ証券副社長、野村證券副社長、SMBC日興証券副社長、各都市銀行役員方、BMW社長他関係者方、フランクミュラージャパン社長、桂由美、横綱白鵬……>といったアンバイ。豪華絢爛な結婚披露宴だ。