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2020/11/19

イランとアルカイダの“密”な関係

 今回、マスリと共に娘のマルヤムも暗殺された。マルヤムはビンラディンの息子ハムザ(2019年に死亡)の妻だった。2人の結婚式が挙げられたのもイランだとされる。マスリも2003年からイランに逗留、他にもアルカイダ指導部メンバーが複数潜伏しているとされる。

 アルカイダがいまもイランと協力関係にあるというのは、アメリカやイスラエル当局にとっては“周知の事実”なのだ。

 今年8月7日にアルカイダのナンバー2であるマスリが殺害された際、イラン・メディアは「レバノン人歴史研究者が銃殺された」と報じた。マスリは2015年からは名前と身分を与えられ、テヘラン郊外で自由気ままに暮らしていたと伝えられる。マスリ暗殺が報じられると、イラン当局はただちに「我が国にはテロリストなど一人もいない」と事実を否定した。

マスリが殺害されたと報じられたイラクのテヘラン市街地 ©getty

 イランはイスラム教シーア派を奉じる反米イスラム国家だ。対してアルカイダはイスラム教スンニ派の武装組織である。しかしシーア派とスンニ派は敵対関係にあるという表面的な理解は正しくない。むしろ両者は共通の敵を前に手を組むのが一般的だ。

バイデン政権による「世界の治安リスク増大」

 イランに対し「最大の圧力」政策で経済制裁を強化するトランプ大統領とは異なり、トランプと次期大統領の座を争う民主党のバイデンはイランに対し融和策をとり、イラン核合意にも復帰する可能性を示唆している。

 イランが支援しているのはアルカイダだけではない。パレスチナ自治区ガザのハマスとイスラミックジハード、レバノンのヒズボラ、イエメンのアンサールッラー(フーシー派)など、中東各国の「代理組織」と言われる武装組織を支援し、これが中東不安定化の最大要因となっている。

 トランプ政権が「世界最大のテロ支援国家」と呼ぶ所以だ。

トランプ(左)とバイデン ©getty

 次期大統領がイランへの制裁を解除する方向へと舵を切れば、それは即、中東のさらなる不安定化と世界の治安リスク増大につながる可能性がある。

 日本のメディアがイスラム過激派について報じないからといって、「もうイスラム過激派なんていない」と我々日本人が油断すれば、イスラム過激派の思う壷だ。彼らが日本も日本人もターゲットにしていることを、決して忘れてはならない。

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