「裁判長! 答弁を差し控えます!」
10月22日、被告人の男がこう声を張ると、東京地裁の法廷で失笑が漏れた。声の主は、元法相・河井克行被告(57)。この日は妻、案里被告(47)の公判で証人として出廷した。
自身も公判中の身であることを理由に証言を拒否する克行被告は、検察側から質問されるたびに「裁判長! 差し控えます!」などと、声を張り上げまともに取り合わなかった。2時間以上にわたり100回を超える証言拒否。その際、「証言」を「答弁」といい間違えたことからも国会議員への未練が感じられた。
案里被告が初当選した昨年7月の参院選で地元・広島の県議や市議、後援会関係者ら支援者総勢100人に計2900万円余りをばらまいたとして、公職選挙法違反(買収)罪に問われた克行被告。うち、5人の計170万円分を共謀したとされる案里被告とともに、夫妻の公判がそれぞれ連日のように東京地裁で開かれている。
夫妻の公判では、河井陣営による“トンデモ行為”が次々に明らかにされている。
自民党候補に対する“ネガティブキャンペーン”
案里被告の10月19日の公判では、陣営の「仕事」を請け負った元秘書であるネット業者の供述調書が法廷内で読まれた。そこで語られたのは、参院選広島選挙区で同じ自民党から立候補し、案里被告と野党候補に負けて落選した溝手顕正氏に対する“ネガティブキャンペーン”だ。
供述調書によると、ネット業者は克行被告の指示で匿名のブログを開設し、溝手氏を支持する自民党広島県連が案里被告をいじめているという記事を書いた。克行被告は自ら内容を逐一チェックしていたという。
克行被告自身の選挙である平成29年の衆院選の際にも同様の工作を行った、と明け透けな調書だった。反対に、夫妻の陣営に対するネガテイブな内容の記事などは検索エンジンで表示されにくくするという工作も行ったという。