昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/12/01

 2年になり、一人で下校しようとしていた田村さんは玄関先で教師に呼び止められ、いつものように警戒せず車に乗り込んだ。道中「ファミレスで食事していきますか」と言われて店に寄り、食事を終えると「こんな美術展が開かれているから休みの日に一緒に観に行きませんか」と誘われ、美術が好きだった彼女は無邪気に喜んだ。今なら40近いおじさんが高校生を誘うなんておかしいと思えるんですが……と彼女は言う。

「うちの父親は仕事人間で気難しく、すぐ手が出る人で、それを母が泣いて止めてくれるものの、何となく家に帰りたくない気持ちがありました。一方で先生と話していると楽しいし、恥ずかしい話ですが、森のなかのメルヘンチックなお屋敷で先生とのんびり暮らせたらいいのになんて子どもじみた空想をしたこともあります。要するに現実的な恋ではないのですが、漠然と憧れを持っていた先生とお出かけできるのは嬉しかったんです」

写真を口止めに

 その教師が他の生徒たちと休日にカラオケに行ったなどと聞くこともあり、田村さんは美術館などに連れて行ってもらう距離の近さを「特別」とも考えなかったという。

©iStock.com

 しかし教師と出かけた休日の帰り、夜道を走っていた車は、いつしか港のような人気のない場所に入って停まった。シートベルトを外して無言で凝視してくる教師に田村さんは怖くなり、うつむいて体をこわばらせた。教師はため息をつくと、「君ってやつは。私のことが好きじゃなかったのか」などと責め立てた。好きだと口にしたことはなかったが、何も言えずにいる田村さんにしびれを切らしたように教師は腕を伸ばしてきて、こう告げた。

「失礼しますね」

 スカートをめくられ、下着の中に手を入れられた田村さんは、混乱した頭で「これって私のせいなの、私が悪いのかな」としか考えられず、されるがままになった。

「後からその教師に言われたのは、『これは普通の行為で別に悪いことじゃないと君に繰り返し教えた』『男性に警戒心を持たないように誘導した』ということでした。だからなのか、最初の怖さもだんだん麻痺していって。体を触られるのは男女の関係であって、教師と生徒の関係じゃないということを当時は認識できなかった」