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2020/12/01

 森脇正博・京都教育大学附属京都小中学校教諭と榊原禎宏・京都教育大学教授が昨年発表した論文によると、公立教師によるわいせつ行為の処分件数は、全国の23歳以上60歳以下人口の発生率に対しておよそ1.5倍高い状況が続いている。年代は若手からベテランまで幅広く、校種でいうと小学校より中学、高校と発生率が上がる。森脇教諭はこうした傾向から「(小児性愛者といった)教師のパーソナリティーの問題以上に、中高特有の部活動指導など距離の近さが影響していると感じる」と指摘する。

「私、この教師の便器だったんかな、今思えば」

 兵庫県尼崎市の公立高校で被害に遭った小野香織さん(仮名、52)のケースは、まさに部活動から生じたものだった。

 家族連れで賑わう休日のショッピングセンター。その一角で小野さんは高校の卒業アルバムを開き、「真面目そうな子でしょう?」と体育会系部活動の集合写真を指差した。かつての彼女は、やや硬い表情で背筋を伸ばしている。少し離れた位置で直立する男性顧問が、加害教師だ。生活指導担当でもあり既婚者、子どももその頃生まれている。

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 小野さんは遠い目をしてつぶやく。

「私、この教師の便器だったんかな、今思えば」。言葉に詰まる私に彼女はぎこちない笑みを向け、「かわいそうだと思わないでくださいね、そう思われると教師への憎しみがこみ上げるからしんどいんです」と続けた。

 小野さんの所属していた部は強豪として知られ、顧問教師は部員たちから恐れられる絶対的な存在だった。実力があった彼女は他の部員より大切に扱われ、親身に指導してもらえてありがたいと感じていたという。

 2年のある休日、小野さんは突然顧問に呼び出された。「車に乗れ。六甲へ行く」と指示され、走り込みにでも行くのだろうかと素直に従った。しかし車は目的のないドライブに終始し、その日はそれで終わった。

 後日、日曜日にまた同じような呼び出しがあった。何の疑いもなく顧問の赤い車に乗り込んだ小野さんは、やがて車が隣市のラブホテルの入口をくぐったことで混乱した。一部屋に一つガレージがあり、受付を通らず入室できる店だ。小野さんは振り返る。