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連載近田春夫の考えるヒット

[Alexandros]から考える、“ロック”と“ロックンロール”の違い――近田春夫の考えるヒット

2020/12/02

『Beast』([Alexandros])/『NEW ERA』(SixTONES)

絵=安斎 肇

「ロックにはあってロックンロールにはないもの」といえば、ひとつは――魅力の評価に於ける――難易度というパラメータの存在ではないか。

 平ったく申せば、すごい難しい曲を易々とこなしてしまうとはなんてすごい! てなことだ。ロックンロールではあまり聞かない話だろう。

 ロックならではの、そうした「ワザの披露でリスナーの度肝を抜いてみせる」というのは、多分'70年デビューのエマーソン・レイク・アンド・パーマーあたりが開祖だ。一方同じ頃、ハードロックでは、のちに“超絶技巧”などと呼ばれるようになる、ギターの速弾き競争が始まった。

 生まれつきの資質が大きくものをいう“センスの競い合い”と比べ、述べたような難易度に関する挑戦は、後天的な“地道な努力”でもって他を凌ぐことが出来る余地を残す分野といえる。そこでは、天才ではない、秀才/頑張ったひとも報われるのである。

 そうした構造的側面が、産業としての“ロック音楽”の裾野を拡げるのに一役買ったというのも、あながちあり得ぬことでもないのでは? というのが持論ではあるが、それにしても、最近の日本のロックバンドの演奏能力の高さには、目を見張るものがある。

Beast/[Alexandros](UNIVERSAL J)ボーカルの川上洋平はシリア育ちで、中東訛りの英語と日本語で歌うバイリンガル。

 今週の[Alexandros]にしてもそうだ。例によってネットで音源を探していると、TV番組に出演している録画が出てきたので立ち上げたのだが、音が始まった途端、これは大変かも……と、画面に見入ってしまった。かなりのアップテンポの上に、仕掛け満載という、なかなかに複雑に入り組んだ作りの楽曲を、いともたやすくこなしていたからだ。

 大変かも、といったのは練習のことである。てかその前に、そもそも一体どのようにして曲をカタチにしていったのか? それぞれバンドにはやり方/スタイルもあるのだろうが、それにしても、こりゃゼロから完成まで、随分と手間がかかったに違いない。それこそ“難易度”のレベルは相当高いといえよう。

 ここで特筆したいのが、そうした一瞬の気の緩みも許されぬような楽器演奏をこなすかたわら、一方ではその実務的な作業に煩わされることなく、ケレン味のある歌唱への集中力を片時も絶やさず発揮してみせる川上洋平の――いわば二刀流である――なんとも堂にいった“仕事ぶり”のことである。流れが実に無駄なく決まっているのである。

 この男の、エレキをかき鳴らし熱唱するスタイルには、ついつい見入ってしまうような、官能的魅力(カッコよさ)があるのだ。が、それは恐らく、歳の割にガキっぽい(ケレン味といったのはそのことだ)歌い方ともども生来のというか、こちらは決して努力の末、身につけたワザではないだろう。ただ、そのフェロモン増量の為の研鑽に励むのは決してやぶさかではなさそうであるが。

NEW ERA/SixTONES(Sony Music)今年1月、Snow Manと2組同時にCDデビューし話題に。本作は3rdシングル。

 SixTONES。

 この曲に限らず、最近のジャニーズ楽曲は、以前より体感温度の低めなのが多い気がする。

今週の更新「携帯電話はiPhoneを使っているんだけど、ソフトウェアのアップデートってあるでしょ。この間iOS14.2をインストールしたら、手書きメモアプリFastFinga3がなぜか立ち上がらなくなってさ」と近田春夫氏。「バージョンアップの作業が進んでいるのか、何なのか……。いずれにしても、不便だなァ。このアプリを使っている人は注意してね」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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