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特集文春マルシェ

昭和8年創業 和歌山の洋食店「フライヤ」の“厚切り牛タンシチュー”のこだわり

文春マルシェ「美味随筆」〜お取り寄せの愉しみ#7 厚切り牛タンシチュー〜

2020/11/28

 食は人の営みを支えるものであり、文化であり、そして何よりも歓びに満ちたものです。そこで食の達人に、「お取り寄せ」をテーマに、その愉しみや商品との出会いについて、綴っていただきました。第7回はプランナーの川井潤さんです。

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 東京の名店でもそれなりに「タンシチュー」を食べてきたつもりではある。そんな中、この10月に始まった文春マルシェに和歌山の洋食店「フライヤ」で提供されている「厚切り牛タンシチュー」がセレクトされ掲載されていて、ちょっと気になった。いや、だいぶ気になっていた。

「東京の店のモノより本当に美味しいの? 選んできたバイヤーさん大丈夫?」、そして「フライヤ」という店名から揚げ物の方が得意な店なのではないかという疑念を持ちつつも注文してみた。和歌山にあると言う店には行ったことはないし、食べた事もないけれど……。

和歌山「フライヤ」

 そもそもシチューはいつ頃からあるものなのか。ハウス食品のホームページを参考にすると明治4年(1871年)には「シチウ(牛、鳥うまに)」という言葉がメニューに載っている店もあるようだ。山形でも明治17年(1884年)に開業した西洋料理店で「兎のシチー」というメニューを相当高額な料理として提供していたらしい。江戸時代が終わり、西洋文化がどっと流れ込み、文明開化に沸いた頃にシチューは高嶺の花の料理として入ってきて、料理人たちはシチューの具材として兎、羊、モツ、そして今回のタンにチャレンジしていたらしい。今回お取り寄せした店「フライヤ」の創業は昭和8年(1933年)だというから、明治からの店ほど歴史はないがおよそ90年も続く立派な老舗。

 前置きはこのくらいにしておいていよいよ実食。4人前も入っているので家族みんなで食べられる。しかも内容量がひとつ200gもある。シチューのドミグラスソース分も内容量に含むとは言え、ほとんどが牛タンの重さ。普通、一頭の牛から取れるタンは1.6~1.8kgなので一頭の半分近くの舌がこのセットに入っている事になる。タンは貴重品ゆえ値段だって張る、ちょっとした贅沢品。 

 パッケージを見ると、この店では創業時からソースのことを「ドビソース」と呼んでいるらしく、他店のソースとは違うと言わんばかりの創業者河内伊三郎氏の意気込み、こだわり、プライドが命名にも現れているような気がする。

厚切り牛タンシチューセット

 お取り寄せした商品のパックを鍋で5分ほど湯煎し、それをあらかじめ温めておいたお皿に移していただく。浅草の洋食屋「ヨシカミ」でもそうであったのを思い出し、家にあったバターロールを一緒に食べようと用意した。