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「帰れ! 帰れ! 中国に帰れ!」 夫殺しの中国人“鬼嫁”が、性感マッサージで働き始めたワケ

『中国人「毒婦」の告白』#10

2020/12/10
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 2006年、“中国人妻の夫殺人未遂事件”が世間を騒がせた。お見合いツアーを経て結婚した中国人妻の鈴木詩織が、親子ほども年の離れた夫、鈴木茂に、インスリン製剤を大量投与するなどして、植物状態に陥ったのだ。夫の目を盗んで性風俗で働いていたことや、1000万円で整形した等との噂も影響して、センセーショナルな報道が相次いだ。そんな中、事件記者として取材を進めていた、田村建雄氏は、獄中の詩織から300ページに及ぶ手記を託される。取材の様子を『中国人「毒婦」の告白』から抜粋して紹介する。

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「いつかは離婚したい」という強い意思

 では鈴木茂は、詩織が殺意を抱くほどの豊富なお金を持っていたのだろうか。茂の保険金他、当時の資産は捜査当局の調べによれば次のとおりであった。

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 95年被害者の両親が殺害され母屋が放火焼失した火災で火災保険金約1800万円が鈴木茂名義の預金口座に振り込まれていた。そして詩織の実家に、その中から400万円が支払われ、公判当時で1400万円が残金として鈴木茂口座にあった。また同時期、鈴木茂の土地建物や田畑などの合計評価額は約1240万円とされた。そして保険金だ。茂を被保険者とした死亡保険金は3口で合計5770万円だった。確かに、金めあての殺意を抱いても違和感のない金額は十分にあったのだ。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 不倫での男との関係は半年足らずで終わったようだが、詩織は免許証を取得したことにより行動はさらに大胆に、かつ活発になる。

「たぶん02年の前後だと思うけれど秋ちゃんは、頻繁に中国との行き来を始めるんですよ。なんでも、自分が、お見合いツアーで日本人と結婚したので、自分の経験を生かして、日中国際結婚の斡旋をはじめたという話でした」(千葉の実家周辺関係者)

 子どもの件でも茂と話し合いを持つ。

「中国語を学ばせれば将来、子どもたちの役に立つ。だから、できるだけ子どもたちを中国に行かせ、中国語を習わせた方が良いと茂さんを説得したんです。茂さんも賛成していたようです。茂さんは倹約家であっても、こと子どもの教育に関しては熱心だったんです」(前出・実家周辺関係者)

 そうと決まると詩織の行動は素早かった。

 02年5月。中国女性との結婚を望む男性を伴って訪中する。その際、再び2人の子どもも連れて行き、中国の幼稚園に入れる準備をしている。幸い国際結婚を望む男性も順調に相手を見つけることが出来た。

 帰国した詩織に茂が「子どもたちはどうした」と問い、詩織は「2人とも楽しそう。すぐに一番良い幼稚園に入れる」と答えている。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 こうしたやり取りを見るかぎり、子どもを介して、もう一度、2人の仲が改善される方向に向かっているかのようにもみえる。

 だが、詩織の、いつかは離婚したい、という強い意志はすこしも揺らいではいなかったようだ。