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『名探偵コナン』は毎年、100億級のヒット

 それは『名探偵コナン』の映画シリーズの成績推移を見ても同様である。1997年、『もののけ姫』のヒットと同じ年にシリーズ第1作『時計じかけの摩天楼』が封切られた名探偵コナンシリーズは、第1作の興行収入11億円から数年で30億円前後の成績を安定して残す人気シリーズとなり、2014年『異次元の狙撃手』で40億台に乗せると、45億→63億→69億→92億→94億とここ数年で毎年100億級の成績を残すようになった。

 今年は本来公開されるはずだった『緋色の弾丸』が延期となったこともあり、興行が『鬼滅の刃』が『千と千尋』を越えるかに注目が集まっているが、『名探偵コナン』シリーズの驚くべき点は、毎年1年に一度のペースで公開されるシリーズだということである。

劇場版 名探偵コナン 異次元の狙撃手

 宮崎駿も新海誠も、新作は早くて3年、長ければ数年に一度のペースだ。『鬼滅の刃』も同様で、連載はすでに完結しており、物語は決められた最後のクライマックスに向けて不可逆的に流れる一度きりの流れの中にある。

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 だが『名探偵コナン』は、それぞれのエピソードが事件ごとに完結し、また次の年には別の事件をテーマに作品を作ることができる。しかもその観客動員は年を追うごとに増え、通常なら歴史に残るような数字である興行収入100億にせまる数字をコンスタントに毎年出せるようなコンテンツに成長しているのだ。これは日本映画界がいまだかつて持ったことのない強力な安定した収益エンジンである。

 今年の新作が延期になったとはいえ、長い時間を共有してキャラクターたちと信頼を結んできた観客たちが突然『コナン』シリーズに興味を失うとは考えにくい。コナンの最終回はまだ描かれる予定がなく、アニメ製作者が引退を宣言する心配もない。配給する東宝と日本テレビは、『コナン』シリーズが続く限り、以前なら半世紀に一度、現在でも数年に一度のヒット作レベルの巨大な興行収入を毎年のように安定して期待できるのである。そのコナン・マネーの安定した収入は、他作品の製作費、新しいチャレンジを可能にする。

※興行通信社調べ

 さて、ここまで僕が日本のアニメ映画市場の目覚ましい成長について書いてきたのは、日本映画界の明るい未来を手放しで賞賛するためではない。300億に迫る『鬼滅の刃』、毎年100億近い興行収入を安定して稼ぎ出す『コナン』シリーズ、そうした巨大な利益を生み出すアニメーションの根幹は、すべてアニメーターという職人たちの繊細な技術によって支えられているという構造を、『鬼滅の刃』のヒットに社会が沸きかえるこのタイミングでどうしても書いておきたかったからだ。