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そしてサイは投げられた

近田 あの曲のちょっと前ぐらいに、僕は「考えるヒット」にこんなことを書いたんですよ。もしこれからアメリカのチャートでアジアの楽曲が坂本九の「スキヤキ」以来の首位を獲得するとしたら、絶対にそれは韓国から出るだろうって。まあ、「江南スタイル」は惜しくもビルボード2位だったけど。でも、あの事件は、今につながる大きなターニングポイントだった。

 あの曲が唯一ヒットしていない国が日本なんです。

近田 その現象は本当に不思議だったんだよね。PSYという人は、韓国ではどんな扱いを受けてるわけ?

 01年のデビュー以来ずっとトップを走ってきたアーティストなんです。実際にそれこそ江南育ちで、アメリカに留学して、リアルタイムの米国のサウンドを韓国に持ち込んだ。メロディー作りに長けていて、大きな体で表現するダンスもユニークで上手い。そして、プロデューサーとしての才能も持ちあわせている。

「江南スタイル」を日本人は理解することができなかった ©AFLO

YouTubeの再生回数制限を変えてしまった

近田 才人なんですね。 

 そう。だから、日本の市場に合わせて売り込んでいたタイプのK-POPとは違って、わざわざ輸出する必要もなかったでしょう。

近田 国内の需要だけで十分ビジネスが成立していたということね。

 「江南スタイル」は、海外のことなんか全然気にしないで、完全に国内向けに作った曲だったんです。

近田 だって、ソウルの一区域である江南の地元ネタだなんて、ローカルにもほどがあるもんね(笑)。

 それが予想外に大ヒットしてしまった。それもYouTubeの再生回数制限を変えてしまうほどの世界的なメガヒットでした。ただ、あの曲は、旧来の韓国歌謡と欧米のダンスミュージックの要素を上手に折衷している。だから、日本人より欧米人の方が親しみを感じやすいサウンドとパフォーマンスになっています。

近田 確かに。それが韓国産のものであろうと欧米産のものであろうと、ああいうタイプのダンスミュージックって、日本ではあまりウケないんだよね。