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2021/02/20

将棋とインターネットは「非常に相性がよかった」

 将棋界の重要なコンテンツは指し手の記録である「棋譜」だけではない。将棋指したちのドラマ、エピソードを追いかけるだけでも、実は十二分に面白い。現在、インターネット上では将棋界に関するさまざまな情報が伝えられている。「観る将」にとってはそれだけでも最高のエンターテイメントであったりする。

 将棋とインターネットはもともと、非常に相性がよかった。「観る将」が増えた要因は、ネットの普及によるところが大きい。将棋界は一面、伝統的で保守的な側面を持つ。しかしもう一面では、新しい技術を利用することにも長けている。

「観る将」という言葉が広がるにつれ、レトロニム(再命名語)として、従来イメージされていた将棋ファンは「指す将」と呼ばれるようになった。

加藤一二三九段 ©文藝春秋

 一方で「観る将」は、盤外の情報に大きく注目する。かつて将棋の対局は密室でおこなわれることがほとんどだった。しかし最近では、それが広く公開されている。将棋の盤面、対局者の様子まで含めた映像が朝の対局開始から深夜の終局までずっと、リアルタイムで配信されるようになった。

 対局者が着ている羽織袴やスーツ、ネクタイ、シャツはどんなものか。食事やおやつに何を食べているのか。そんな周辺情報までも、ビジュアルとして観られるようになった。そうした「観る将」の観察眼は、専門記者たちよりよほど詳しく鋭かったりもする。

正確無比なAIによる「評価値」

 もとより将棋は難しいものである。最高レベルの対局であれば、アマチュアの「指す将」だけでなく、プロでさえもなんだかわからない、ということも多い。

 現代ではその難しいはずの形勢判断が、数値でデジタルに表される。コンピュータ将棋ソフトが強くなり、「評価値」や「勝率」を示すことができるからだ。「観る将」は中継画面に映る形勢の推移に一喜一憂し、対局者の仕草や表情を観ているだけでも楽しむことができる。

 ドワンゴ元会長の川上量生氏は、ニコニコ生放送でよく見られているジャンルの代表として将棋を挙げている。AIの発展がクローズアップされた2010年代。棋士とコンピュータ将棋ソフトの対決「電王戦」も社会的な関心を集め、「観る将」を増やした。そこでは正確無比なAIの指し手以上に、将棋に向き合う人間のドラマが大きく取り上げられた。