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本田真凜がフィギュアの「女王」である理由 NHK杯では9位でも、実は「2位」だったものとは

2020/12/11

 荒川静香、安藤美姫、浅田真央。日本フィギュアスケート界には、その時々に日本中から注目を集める女王がいて、フィギュア人気に貢献してきた。

 そして今も、「女王」は存在する。少なくともフィギュアスケートの取材者にとっては、間違いなく存在する。

 それは本田真凜である。

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NHK杯での演技を終えた本田真凜 ©GettyImages

 そう書くと、驚く人も多いだろう。トリノオリンピックで金メダルを獲得しイナバウアーで一世を風靡した荒川や、世界選手権金メダルを持ち4回転ジャンプを成功させた安藤、国民的スターだった浅田たちと本田真凛では、残してきた成績がまったく違う。

表彰台に上がったことのない女王

 本田にオリンピックや世界選手権の出場経験はない。グランプリシリーズでも、優勝はおろか表彰台に上がったことすらない。全日本選手権でさえ、一度も表彰台に上がった経験がない。でも、女王なのだ。

 それは、ニュースの数に目を通せば一目瞭然である。本田が10位だった11月上旬の東日本選手権で、試合全体を網羅したものを除き、各選手にフォーカスした記事の数で調べてみた。女子シングルが終了した11月7日午後から翌8日朝にかけて、本田をメインに扱った記事の本数は6本。優勝した選手・樋口新葉は4本だった。

 続いてNHK杯でも、同じく女子シングルのフリーが行われた11月28日に、本田について9本の記事が配信されている。国際大会だけあって、さすがに優勝した坂本花織の17本には届かなかったが、2位の樋口新葉の7本より多い。本田のスケートでの成績は9位でも、記事の数では「銀メダル」だった。

 この傾向は、大会がない時期はさらに顕著になる。「本田がインスタグラムを更新した」というだけの記事が。世の中には無数にある。他の現役女子選手では決して起きない現象だ。CM起用やJALとの契約など、スポンサーからの引き合いも段違い。

2017年、ジュニアの頃から表現力は頭ひとつ抜けていた ©文藝春秋

 しかし、期待に反して競技成績は一向に上向いてこない。結果として、SNSなどには本田への手厳しい言葉が並ぶ。

 優勝した選手より扱いが大きいのはおかしい、持ち上げすぎ、記事にする必要はない……。

 その言い分はたしかに一理ある。シニア入りして以降、本田は常に人気が先行してきた選手である。それでも特別扱いが今まで続いているのには理由がある。スポーツ紙の記者は、その理由をひとことで説明する。