『LET IT OUT』(HYDE)/『はっきりしようぜ』(スターダスト☆レビュー)
◆
オリコンにはデイリーシングルランキングというものがある。ちなみに今週取り上げるHYDEの『LET IT OUT』は11月24日、スターダスト☆レビュー『はっきりしようぜ』が25日と、それぞれが同じく4位につけている。
今の時代は昔と違いランキングを構成する要素も複雑だ。また音源全体(の売り上げ)を取り巻く状況も、かつてとは大分様子が変わってしまった。チャート順位の読み方/解釈もなかなか難しくなってきている気がする。例えばこの4位である。果たしてすごいのか、すごくないのか?
それにしても今回。二曲を聴き、日本のロックの裾野の広さというものを、改めて実感せずにはおれなかった。誤解を恐れずに申すのなら、使用される楽器やその奏法/用法などを除けば、『LET IT OUT』と『はっきりしようぜ』の間には、接点/類似性というものがほぼ見出せなかったのだ。それでも、たとい誰に聴かせようと、どちらの楽曲も「ロックだ」と、きっとその人は答えるに違いない。
まぁ、だからそれがどうしたといわれても困るのだが、我が国においてロックとは何なのか、ますます定義/説明は難しいものになってきているのだなぁと……。ふと、感慨に浸ってしまった次第。
なんとか二者に共通項はないものかと考えていくうち、ひとつ答えが見つかった。
HYDEも根本要も、そろって喉が強いのだ。なるほどその喉の強さのあってこそ、この二曲をして人は“ロック”を感ぜずにはおれぬのだなと、私はそのように合点もしたものだが、まぁそういってしまえば、プロの歌手の喉というものは、おしなべて強いものなのかも知れぬ。が、ただそれぞれ分野ごとに、その意味するところは違う。プラシド・ドミンゴとジェームズ・ブラウンと小林幸子の喉の強さを同じ基準で語るのには、いささか無理もあろう。
二人の喉の強さには、今示した文脈の通り、他ジャンルとは一線を画す、独自性を誇るもの、いうなれば、歌謡曲でもない、英語圏のロックでもない。あるいはそのふたつの発声法のハイブリッドということなのかも知れないが、ただいたずらにフィジカルな力技に頼んで観客をねじ伏せてみせるというのだけではなく、そこにきめの細かい匠の技の存在を実感させるといおうか。一種“芸”としての見事さ/達者ぶりが、堂々兼ね備わっているのである。
そうした日本のロックシンガーならではの“喉の強さ”を堪能するのならば、今回のお薦めは、全編英語詞で歌われる『LET IT OUT』の方だ。本場モノにはない人工的な世界/景色が優美に表現される、それは彼の地のシンガーたちの持ち味であるマッチョなタフさとはまた異なる強さであることが、比較してよく分かるだろうと思うからである。
スターダスト☆レビュー。
♪這いつくばっても/笑える日が来る
ってどういう意味なんだろう? 俺、分かんなかった。
今週の拝啓、母上様「恐れていたコロナの第三波がきちゃったね。ホント、いつになったら収束するんだろうなァ」と近田春夫氏。「俺の母親が施設に入っているんだけど、ここ最近コロナの影響で面会できなくてさ。しょうがないから電話して職員さんに様子を聞いたんだ。御年101歳、今の状況をちゃんと把握して元気にやってるって聞いて安心したよ!」
ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。
