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シャンシャン誕生秘話「園長の自宅前に記者が張り込み…パンダ以外ありえない」

「文藝春秋」2021年1月号「巻頭随筆」より

2020/12/17

 上野動物園のジャイアントパンダのシャンシャンが、今月末までに中国に返還される予定が、来年5月末まで延期されることになった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、専門スタッフの同行が難しいとの判断があったという。3年前、オスのリーリーとメスのシンシンの間に生まれたシャンシャン。その成長ぶりをそっと見守ってきた、前上野動物園園長で日本パンダ保護協会会長の土居利光さんによる「シャンシャン誕生秘話」(「文藝春秋」2021年1月号)を特別に公開する。

シャンシャン ©JMPA

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電話口から聞こえた「無事、生まれました!」

「いつ頃生まれますか?」

 園長の自宅前に記者が張り込むことなど、パンダ以外にありえません。以前は、誕生直前、スクープを狙おうと私の家の前にも記者が立つことがありました。でもシャンシャン誕生当日、私は中国の成都に出張中で、記者に囲まれることはありませんでした。

 忘れもしない2017年6月12日、電話口から聞こえたのは、「無事、生まれました!」という弾んだ声。上野に、5年ぶりにパンダの小さな命が誕生したという報せでした。この時、私はすでに動物園を退職していましたが、4カ月前に園長としてリーリーとシンシンの交尾をそばで見届けていただけに喜びはひとしおでした。

©高氏貴博

 ことの起こりはその年の2月、ある女性職員が私のもとへやってきて、「そろそろかもしれません」と耳打ちしたこと。彼女に連れられ、パンダ舎へ行くと、そこにはパンダ班の飼育員たちが勢揃いしています。上から放飼場を見ることのできるキャットウォークとパンダ舎の中とで無線を使って密に連絡を取り合い、交尾のタイミングを見計らっていたのです。