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桜前夜祭で3度目は消えた?安倍前首相の本質はSNS駆使の“感動政治”だ

安倍晋三論|プチ鹿島

2020/12/25

source : 文藝春秋 digital

genre : ニュース, 社会, 政治

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 7年8カ月超という憲政史上最長の在任期間を終えた安倍晋三前首相。「桜を見る会」前夜祭を巡る問題で、東京地検特捜部は安倍氏の公設第1秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。一方、安倍氏本人は不起訴処分となった。12月24日に急遽開いた記者会見では、事実と異なる過去の国会答弁を謝罪しつつ、自身の関与は繰り返し否定。25日には衆参両院の議院運営委員会に出席し、国会答弁を訂正のうえ陳謝した。まだまだ過去の人にはなりえない「安倍晋三」という政治家について、時事芸人のプチ鹿島さんがあらためて考察する。

8月28日、記者会見に臨む安倍晋三氏(首相官邸HPより)

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首相辞任後からどんどん元気に

 安倍さんが最近お元気です。

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 お元気すぎてまた「桜」も咲いてます。「桜を見る会を見る会」を数年前から結成していた私からすれば見逃せない動き。

 まず、首相辞任後からどんどん元気になってく様子を新聞紙面で追ってみよう。

 10月20日の日刊スポーツの一面には目を奪われた。アーチェリーで弓を弾くポーズのゴキゲンな安倍晋三前首相。全日本アーチェリー連盟会長に復帰したという。単独インタビューに応じ「五輪秘話」を語っていた。

 首相辞任後に安倍氏(以下敬称略)は新聞各紙のインタビューに積極的に応じている。

 面白かったのは日本経済新聞(9月30日)。安倍が7年8カ月超の政局運営を振り返り、2017年の衆院解散の判断が「一番当たった」と語っているのだ。

「自分で言うのもなんだが、衆院解散の判断で一番当たったのは17年秋の衆院選だ。森友・加計問題で責められ、支持率も少しずつ下がっていた。17年8月に支持率が少し上がった」

2018年、桜を見る会での安倍晋三氏 ©文藝春秋

 それならどこかで勝負しようと考えた、と。当時は小池百合子率いる「都民ファーストの会」の国政進出が噂された。

「いちかばちか小池氏の準備が整っていないときに襲いかかるしかないと思った。自民党内でも反対された。結果として小池氏への支持が広がらず、自民党が284議席を得た。逆『桶狭間』という状況になった」

 逆桶狭間! 安倍さん本当にゴキゲン。それにしても織田信長のような怖さを小池さんに感じていたのですね。

 たしか国難突破解散と言っていた気がするが「小池氏の準備が整っていないときに襲いかかるしかない」って、解散の大義はやはり何でもいいと教えてくれたインタビューであった。

来年秋までには「安倍派」が誕生する見通しだった

 実は最近も解散についてパーティで言及している。《「来年いつ選挙をやるかは菅義偉首相が決めること。私がとやかく申し上げるわけにはいかない」と断りつつ、「もし私が首相だったら、(誘惑に)駆られる」》(毎日新聞11月17日)。

 菅は自分の「番頭」だったという意識が安倍にはあるのだろう。格下を語る感満載。首相先輩風である。石破茂や岸田文雄がパッとしない今、菅首相にとって前首相こそが厄介な人になってきた?

©JMPA

 ここで安倍の出身派閥である細田派(清和政策研究会)を思い出してみよう。自民党では最大派閥であるが、誰もが一致して認める次の総裁候補がいないことが弱みと言われている。しかし前首相が派閥に戻れば悩みが解消する可能性も。

《来年秋までには「安倍派」が誕生する見通しだ。細田派内の期待は高まっており、「二度あることは三度ある」と、首相への返り咲きを期待する声も出始めている。》(朝日新聞11月19日)

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